アステル法律事務所 熊本の弁護士法人アステル法律事務所

新規予約専用0120-94-7455
事務所番号 熊本本社
096-352-0001
八代オフィス
0965-39-5368

受付時間/平日9:00〜17:00

News & Blogお知らせ & ブログ

お知らせ

事業所報

2025/10/16

著者Author :アステル

THE ASTER TIMES 2025.10 vol.46

生成AIの利用に伴う法的リスク

 

1 はじめに

生成AIは、企業活動や私生活を効率化する便利なツールとして、定着しつつありますが、その利用に伴う法的リスクには注意が必要です。法的リスクは、プロンプトとして、またはファインチューニングの目的で、情報を入力する段階のものと、生成AIが出力した成果物を利用する段階のものに整理できます。

 

2 成果物利用段階のリスク

生成AIの成果物が、第三者の著作物や肖像と類似している場合には、著作権やパブリシティ権または肖像権の侵害が問題になります。

成果物について著作権侵害が成立するには、既存の著作物との類似性に加えて、既存の著作物に接してそれを自己の作品に利用したこと(依拠性)が必要とされています。利用者が既存の著作物を認識しており、当該著作物を入力して成果物を生成した場合には、依拠性が認められて著作権侵害となる可能性が高いです。生成AI の場合は、利用者が(開発段階で学習された)既存の著作物を認識していなくても、当該著作物に類似した成果物が生成されるケースが想定されます。「AIと著作権に関する考え方について」(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)は、このようなケースも、依拠性があったと推認され、AI利用者による著作権侵害となる可能性があると指摘しています。

また、肖像については、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合は、パブリシティ権の侵害となる可能性があります。

 

3 情報入力段階のリスク

同一または類似の内容を出力させる目的で既存の著作物を生成AIに入力することは違法な複製行為になります。

個人情報取扱事業者が「個人情報」を入力する場合には、目的外利用(個人情報保護法17条1項)、第三者提供規制違反(同法27条1項)などが問題になりえます。

自社の営業秘密である情報を入力する場合は、その情報が機械学習に利用される設定になっており(自社領域で運用しているケースは除きます。)、かつ、そのような入力が自由に許されている場合は、不正競争防止法上の営業秘密として保護されるために必要な秘密管理性が失われる可能性が高いといわれています。

このほか、秘密保持義務を負っている外部情報を入力することは、債務不履行責任や不法行為責任を招く可能性があります。

 

4 最後に

生成AIの利用に伴う法的リスクの軽減には内部ルールや体制の整備が有効といわれています。整備をご検討の際には、当事務所にご相談ください。

八代オフィス /弁護士 中松洋樹

 

役員の退職慰労金を減額するときの取締役会の裁量権 ―最高裁令和6年7月8日判決(テレビ宮崎事件)

 

1 事案の概要

Y社の代表取締役だったXは、①約3年間に社内規定に違反する多額の宿泊費等(ホテルのスイートルームの費用等)の支給を受け、②その発覚後もさらに約3年間、宿泊費等として支給を受けられなくなった分を自己の報酬額を取締役会を経ずに無断で増額改定して受給し、加えて③Xが中心となって推進していた文化芸術活動支援事業等に多額の費用をY社に支出させました。

このため、Y社の取締役会は、Xの退任にあたり、上記①~③によりY社が支出した金額をもとに、Xの退職慰労金の支出金額を約90%減額する決定をしました。

これに対して、Xが取締役会の裁量の範囲を逸脱・濫用したものだとして争ったのが本件の事案です。

 

2 退職慰労金を決めるのは誰か 株主からの一任

通常、退職慰労金というのは、在職中の職務執行の対価という性質を有しますので、会社法上の「報酬等」(法361条1項)に当たり、株主総会の決議で定める必要があります。

もっとも、必ずしも株主総会の決議で具体的な金額等まで定める必要はなく、一定の支給基準が確立していて、その基準が株主に推知しうるものになっているならば、具体的な金額等は取締役会に一任することができます。

本件では、この一任された取締役会の裁量の範囲が問題となったものです。

 

3 取締役会による個々の取締役に対する監督権限

本件でY社は、慰労金内規において「取締役会は、退任取締役のうち、在任中特に重大な損害を与えたものに対し、第3条により算出した金額を減額することができる。」という特別減額規定を置いていました。

取締役会には、個々の取締役を監視・監督する責任があり、こうした減額規程は、個々の取締役の在任中の非違行為を抑止する(非違行為に制裁を課すことで職務執行の適正を図る)という目的をもつことになります。このため、効果的な抑止になるような水準での減額が可能でなくてはなりません。

 

4 最高裁の判断 取締役会に広い裁量権あり

Xは、特に③の行為による支出額まで考慮して減額したことについて、裁量の逸脱等を強く主張しましたが、最高裁は、上記3のように減額規程が取締役会の監督手段として機能するものであることに触れ、取締役会は(ア)行為の内容や性質、(イ)その行為によってY社が受けた影響、(ウ)その退任取締役の地位等の事情を総合考慮して判断すべきものであるとしつつ、「これらはいずれも会社の業務執行の決定や取締役の職務執行の監督を行う取締役会が判断するのに適した事項」であるから、取締役会が「広い裁量権」を有すると判断しました。

本件において、Y社の取締役会は、判断するにあたり、Xと利害関係のない弁護士等で構成された調査委員会の調査報告書も踏まえて減額決定を行いました。減額範囲を決めるにあたっては、確かに①~③の行為による支出額について積み上げる形で考慮されていますが、仮に③が単体として減額に相当するような非違行為でなかったとしても、①や②の非違行為の重大性から、取締役会の判断の合理性が肯定できるとされました。

 

5 まとめ

会社(取締役会)として、会社に対する非違行為を起こした役員の退任にあたり、当該役員の退職慰労金を減額する制裁を課すことは、取締役の職務執行の適正を確保していくうえで大変重要なことです。

いざというときに取締役会の広い裁量による判断ができるよう、減額規定は設けられているか、規定上減額の幅を不当に狭めていないか等について、この機会にぜひご確認いただければと思います。

熊本本店 弁護士 福井 春菜

 

改正下請法の要点~下請法が取適法に~

 

第1 下請法の改正

現行の下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)が改正され、その改正法が令和8年1月1日に施行されます。改正に伴い、法の名称は、「下請法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(新通称:取適法)」となります。

取適法では、主に規制内容の追加や規制対象の拡大がされています。

 

第2 改正下請法(取適法)の要点

1 取適法の概要

取適法は、適用対象取引を、①取引の内容と②資本金基準又は従業員基準(いずれかの基準に該当すれば適用対象)から定め、委託事業者(下請法の「親事業者」)の4つの義務項目と11の禁止行為を定めています。以下、主要な改正点である適用対象の拡大及び禁止行為の追加に焦点を当て、解説します。

2 法律用語の変更

取適法の下では、これまでの「下請代金」が「製造委託等代金」に、「親事業者」が「委託事業者」に、「下請事業者」が「中小受託事業者」に用語変更されます。

3 適用対象の拡大

(1)適用基準に「従業員基準」を追加

現行下請法においては、資本金を基準として下請法の適用の有無が決定されていました。しかし、事業規模は大きいものの当初の資本金が少額である事業者や、減資をすることによって、下請法の適用とならない例などがありました。

そこで、取適法では、これまでの資本金基準だけではなく、委託事業者と中小受託事業者の従業員基準を追加し、取適法の対象取引について、資本金基準又は従業員基準のいずれかをみたせば取適法が適用されることになりました。

新しい従業員基準では、従業員300人(製造委託等)又は100人(役務提供委託等)が基準とされています(取適法2条8項、9項)。

(2)対象取引に「特定運送委託」を追加

取適法の対象取引に、「特定運送委託」という製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託が追加されました。

この改正により、取適法の適用対象となる取引は、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託と大きく5つの取引内容に大別されることとなります。

4 禁止行為の追加

(1)「協議に応じない一方的な代金決定」を禁止

中小委託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、委託事業者が必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定して、中小委託事業者の利益を不当に害する行為を禁止する規定が新設されました(取適法5条2項4号)。

つまり、代金に関する協議に応じないことや、必要な説明を行わないことなど、一方的な代金決定が禁止されます。

(2)「手形払」等を禁止

支払手段として、手形等を用いることにより、発注者が受注者に資金繰りに係る負担を求める商慣習が続いていたため、取適法上の支払手段として、手形払が認められないことになりました。また、電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金相当額満額を得ることが困難であるものについても認められないことになりました(取適法5条1項2号)。

現行下請法では、支払日に手形を交付することにより、受注者が現金を受領するまでにさらに期間がかかることになっていましたが、改正法下では、現金受領までの期間が60日になります。

 

第3 終わりに

新「取適法」においては、これまでの下請法と適用対象基準、適用対象取引、禁止項目等さまざまな規定が改正されています。

新「取適法」について疑問点がございましたら、アステル法律事務所にご相談ください。

熊本本店 弁護士 吉永 考志

 

Contact usお問い合わせ・法律相談のご予約

法的な問題でお困りの方は
まずは弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください!

tel.0120-94くよくよ-74なし55GO! GO!

tel.0120-94-7455くよくよなしGO! GO!

受付時間/平日9:00〜17:00

PAGE TOP