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事業所報

2020/05/25

著者Author :アステル

緊急発行 第2弾 企業のための新型コロナウイルス関連Q&A ー取引編ー

 

契約の不履行・履行遅延の責任

Q1 当社は、非常事態宣言を受けて休業していました。その間、取引先に対する商品の納付等ができませんでしたが、取引先からその間の損害賠償を請求された場合、当社が損害賠償責任を負うことはあるでしょうか?

A 非常事態宣言下において、事業継続を求められているか、休業要請を受けているか否か等で結論が異なると考えられます。

● 解説——————————————————
本件は、債務不履行に基づく損害賠償責任(民法415条1項)に関するものであり、当事者間の契約内容に照らして判断することができる場合はこれに従うことになりますが、契約内容に定められていなかったり、または不明確な規定しかなかったりした場合は、民法等の一般法に照らして判断することになります。そして、後者の民法等の一般法に照らして判断する場合には、商品の納付等ができなくなった事情が、製品製造会社の故意または過失に基づくものとして、債務者の責めに帰すべき事由に該当するかが問題となります。
以下、契約内容に定めがない場合に、非常事態宣言に基づき都道府県知事から事業継続を求められている業種の場合、休業要請を受けている業種の場合、またはいずれにも該当しない業種の場合に分けてご説明いたします。

1 事業継続を求められている業種の場合

都道府県知事から事業継続が求められている業種の会社の場合には、これに反して会社が自主的に休業しているため、休業が取引の社会通念等からしてやむを得ないとはいえないと考えられます。

したがって、この場合は会社が取引先に対して損害賠償責任を負う可能性が高いと考えられます。

2 休業要請を受けている業種の場合

この場合については、現時点では弁護士の間でも見解が分かれています。

まず、都道府県知事からの休業要請はあくまで「要請」であり、強制力を伴うものではなく、休業するか否かの最終的な判断は会社に委ねられているため、会社が休業した場合は自主的に休業したと評価する見解があります。この見解によれば、会社は取引先に対して損害賠償責任を負うと考えられます。

しかし、要請に過ぎないといえども、新型コロナウイルスの全国的かつ急速なまん延を防止する目的で発せられたものであり、かかる状況下で会社に対して契約上の債務の履行を求めた場合、会社としては事業を継続させる方向に動くことになってしまい、これでは緊急事態宣言の趣旨とは逆に感染拡大に寄与する結果となってしまいます。

感染につながるヒトとヒトとの接触を極力減らし、接触の8割減が呼びかけられ、また、可能な限り在宅での勤務を要請されている状況下においては、休業要請を受けた会社にはその社会的責任として休業することが特に求められています。このため、休業について当該会社に責任を負わせることは不相当であって、会社は取引先に対して損害賠償責任を負わないと考えます。

3 前項1または2のいずれにも該当しない業種の場合

休業要請すら受けていない以上、休業するか否かの判断は会社による任意のものであり、休業は社会通念等からしてやむを得ないとはいえないという見解があります。

他方、休業要請を受けていないとしても、前述した会社の社会的責任に照らせば、会社には新型コロナウイルスのまん延防止にできる限り協力することが求められています。そこで、いかなる方法によっても感染リスクを減らしながら契約上の債務を履行することができない場合には、休業は社会通念等からしてやむを得ないものであって、会社は取引先に対して損害賠償責任を負わないという見解も成り立ちます。

この問題については、個別の事案に応じて結論が異なる可能性がありますので、今後の司法上の判断を注視していく必要があります。

 

下請法違反関係

Q2 当社は、部品製造会社(資本金額5000万円)で、機械製造会社(資本金額5億円)から部品の製造委託を受けています。当社は、契約どおりに部品を製造して機械製造会社に納品しようとしたところ、機械製造会社から、「新型コロナウイルスの影響で工場をストップしているので、再開までは部品の納入を停止したい。」と言われました。我々としては死活問題ですが、どのように対応すれば良いでしょうか?

A 事情によっては、下請法4条1項1号の「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと」に該当する可能性があるため、これを主張して、成果物である部品の受領を求める、公正取引委員会に相談し調査や勧告をしてもらえるように促すということが考えられますが、相手方が継続的な取引先であるため弁護士とよく相談して進めていくことが肝要です。

● 解説——————————————————
質問の件では、部品製造会社が機械製造会社に対し、部品の受領拒否が下請法に違反すると主張できるかが問題となります。下請法の適用を受けるか否かは、取引内容や取引当事者の資本金額によって決せられることになります。例えば、委託取引の内容が本件のような部品の製造である場合には、親事業者の資本金が3億円超で、下請け事業者の資本金が3億円であれば下請法の適用があることになります。どのような場合に適用対象となるかは、詳しくは公正取引委員会と中小企業庁から発刊されているポイント解説下請法でご確認ください。
本件の場合、部品製造会社の資本金は5000万円、機械製造会社の資本金は5億円ですので、下請法が適用されることになります。
質問の例では、発注者である機械製造会社が受領拒否を行っている事案ですので、下請法4条1項1号「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと」に該当する違法な行為といえるかが問題となります。
そして、公正取引委員会が公表している下請法に関する運用基準「第4 親事業者の禁止行為 1 受領拒否」では、下請法4条1項1号にいう「下請事業者の責に帰すべき理由」に該当するものとして下請事業者の給付の受領を拒むことが許容されるのは、下請事業者の給付の内容が下請法3条が定める契約書面に明記された委託内容と異なる場合等、極めて限定された場合に限られています。
そのため、新型コロナウイルスの関係で工場をストップしているという事情だけでは「下請事業者の責に帰すべき理由」に該当せず、親事業者である機械製造会社が受領拒否することは下請法に違反するものとして許されないことになると考えられます。機械製造会社としては、一時的に倉庫を借りて保管する等、何らかの代替的な方法を用いて部品を受領する必要があります。
もっとも、部品の性質、大きさ、量等の個別具体的な事情に鑑み、代替的な受領手段が存在せず、客観的に受領が不可能であるという事情が存在する場合には、相当期間納期を伸ばすことは下請法の違反にしないとも考えられます。経済産業省が令和2年2月14日に発表した「新型コロナウイルス感染症により影響を受ける下請等中小企業との取引に関する配慮について(要請文書)」の問4においても、このような場合には当事者間でこのような事情の有無を考慮することが求められております。
仮に受領の代替的な手段が存在すると考えられる場合には、下請事業者である部品製造会社としては、親事業者である機械製造会社の受領拒否が①下請法に違反することを主張して、成果物である部品の受領を求める、②公正取引委員会に相談し、調査や勧告をしてもらえるように促すということが考えられます。
もっとも、下請法違反の主張を安易に行ってしまうと、発注者との継続的取引関係を悪化させてしまうことがあり、契約を打ち切られてしまう(そのこと自体が問題ですが)等本末転倒の結果となることがあります。したがって、下請法違反の主張をしようとする場合には、弁護士とよく相談して作戦を立てて対応することが肝要であると考えられます(このリスクについてはこの後に述べる各下請法違反についても同様です。)。

 

下請法違反関係

Q3 Q2の例で、部品を指定の期日に納品したのに、機械製造会社から、新型コロナウイルスの影響で資金繰りが一気に苦しくなったことを理由として、代金の減額を要求されたため、減額に応じざるを得ませんでした。このような場合にはどのような対応をすれば良いでしょうか?

A 下請法4条1項3号にいう「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」に違反し、減額合意が無効であるとして、全額の支払いを要求することや、公正取引委員会に相談して勧告や指導を要請することが考えられます。

● 解説——————————————————
本件の場合は、親事業者である機械製造会社からの代金減額の求めに応じて減額しているので、下請法4条1項3号にいう「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」に該当する違反があるかが問題となります。すなわち、下請代金の減額を禁止する下請法4条1項3号の規定は、下請事業者保護の観点から、下請事業者が減額に同意している場合にも適用されると解されています。そうだとすると、部品製造業者が減額に同意している場合であっても、下請法に違反するものとして、機械製造会社は、公正取引委員会による勧告や指導を受けることがあります。
また、下請法4条1項3号に該当した場合、減額に至る経緯や、減額の割合等を考慮して、下請法4条1項3号の趣旨に照らして不当性が強いときには、減額の合意が公序良俗に違反して無効となる可能性があります(東京地裁平成22年5月12日判決)。
そこで、下請事業者である部品製造会社としては、合意に基づく下請代金の減額であっても、①下請法4条1項3号の趣旨に照らして不当性が強く公序良俗に違反して無効であると主張して、全額の支払いを要求する、②公正取引委員会に相談して勧告や指導を要請するといった手段を検討することになります。

 

下請法違反関係

Q4 親事業者である機械製造会社から、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で資金繰りが厳しい。部品代金の支払いとして、サイト150日の手形を交付するのでそれで受けてもらいたい。」と言われました。しかし、このような長期サイトの手形では銀行で手形割引してもらうことができず、大変困っております。なんとかなりませんでしょうか?

A 下請法4条2項2号違反を理由として割引困難な手形の受領を拒否し、適正な手形サイトでの支払いを求めることや、公正取引委員会に相談をして勧告や指導を要請することが考えられます。

● 解説——————————————————
本件は、下請法4条2項2号にいう「一般の金融機関・・・による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること」に該当する違反が認められるかが問題となります。
割引を受けることが困難な手形とは、一般的に、その業界の商慣習、親事業者と下請事業者との取引関係、その時の金融情勢等を総合的に勘案して、妥当と認められる手形期間を超える長期の手形のことをいいます。概ね手形サイトは、繊維業は90日、その他の業種は120日とされていますから、それを超えてくると割引困難な手形とされる可能性が高いといえます。本件の手形は、手形サイトが150日ということですから割引困難な手形と評価できます。
したがって、部品製造業者としては、親事業者である機械製造会社に対し、下請法違反を理由に、割引困難な手形の受領を拒否し、適正な手形サイトでの支払いを求めることや、公正取引委員会に相談をして勧告や指導を要請するといった対応が考えられます。

 

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