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事業所報

2022/10/01

著者Author :アステル

THE ASTER TIMES 2022.7 vol.34


 

広告における法的注意点

1 はじめに

つい先日、ジュースの商品パッケージに不当な表示があったとして、大手飲料メーカーが消費者庁から措置命令を受けたとの報道がなされました。

そこで、今回は景品表示法の広告規制の概要をご紹介いたします。

2 不当表示の禁止

景品表示法が規制する不当表示は、①優良誤認表示、②有利誤認表示、③一般消費者に誤認されるおそれのある表示として内閣総理大臣が指定するものの3つに大別できます。

1)①優良誤認表示

優良誤認表示とは、

ⓐ商品・サービスの品質、規格等の内容について、

ⓑ一般消費者に対して、

ⓒ実際のものよりも著しく優良である、または、事実に相違して競合他社のものより著しく優良であると示す広告・表示であって、

ⓓ不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

をいいます。

このうち、ⓒ「著しく優良」とは、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている限度を超えていることを指し、一般消費者が、当該表示・広告から受ける印象・認識と実際の事実に差が生じる可能性が高く、かかる誤認がなければ一般消費者がその商品・サービスを購入することは通常ないだろうと認められる程度の誇張・誇大をいうものと考えられています。

 2)②有利誤認表示

有利誤認表示とは、ⓐ商品・サービスの価格等の取引条件についての広告・表示であり、ⓑ~ⓓの要件は優良誤認表示とほぼ同じです。

 3)③内閣総理大臣が指定する不当表示

①②のほか、無果汁の清涼飲料水等の果汁・果肉の割合、商品の原産国、おとり広告、有料老人ホームのサービス等、内閣総理大臣が特別に指定し、禁止されている表示があります。

3 制裁等

1)  表示・広告の合理的根拠の提出命令

消費者庁は、優良誤認表示の疑いがある場合、事業者に対し、表示・広告の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求めることができます。

15日以内に適切な資料が提出されない場合、当該表示・広告は不当表示とみなされます。

提出資料については、㋐その内容が、試験・調査または専門家の見解・学術文献に基づき、客観的に実証されたものであって、㋑表示・広告された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることが必要です。

2)  措置命令

不当表示がある場合、内閣総理大臣は、差し止めや再発防止策の公示等、必要な事項を命じることができます。

3)  課徴金納付命令

不当表示がある場合、原則として、当該表示・広告が用いられた期間の商品・サービスの売上額の3%を納付しなければなりません。

4 おわりに

今回ご紹介した景品表示法のほかにも、業界団体の公正競争規約、消費者法等、表示・広告にあたり留意すべき規程があります。

弁護士法人アステル法律事務所では、一般的な商品・サービスのほか、医薬品・医療広告のリーガルチェックサービスもご用意しております。

どうぞお気軽にご相談ください。

熊本本店 弁護士 池邉瑞和

 

新しい発信者情報開示請求手続きがスタート ―改正プロバイダ責任制限法施行―

 

 2022年10月1日、改正されたプロバイダ責任制限法が施行されます。

プロバイダ責任制限法は聞きなじみがない法律かもしれませんが、インターネット上での権利侵害について、プロバイダ等に対する損害賠償請求や、誹謗中傷等投稿の発信者の情報開示について定めた法律です。

今回の改正では、インターネット上の誹謗中傷投稿を書き込んだ人物を特定する手続き(発信者情報開示請求)について、新しい裁判手続きが創設されました。

 

 誹謗中傷投稿がなされた場合、被害者は、書き込まれた掲示板やSNS等の運営者に対し当該投稿の削除を請求することができるほか(削除請求)、書き込んだ者に対する損害賠償請求をすることができます。しかし、インターネットを用いて誰が投稿したか分からないため、損害賠償請求を行うためには、まず当該投稿をした者が誰かを特定せねばなりません。

発信者を特定するためには、①当該投稿が「いつ」「どのIPアドレスから」投稿されたものかをまずは特定し、そして②「その時、そのIPアドレスを利用していた者(プロバイダの契約者)」を特定するという2段階の手続きが必要になります。

従前は、それぞれの段階で個別の裁判手続きを経ねばならず、そのために手間も時間もかかっていました。また、発信者情報は半年程度で保存期間が経過してしまい、発信者を特定できないというケースも生じていました。

 

 今回の改正では、2段階ある特定行為を1つの裁判手続きで行うことができる制度が創設されました。

投稿者特定までに必要な段取りは上記と変わりませんが、新しい手続きでは、当該投稿のIPアドレス等の情報を持つコンテンツプロバイダに対して、当該投稿の投稿者が契約しているアクセスプロバイダの名称等を開示させることができ(提供命令)、1段階目の途中でアクセスプロバイダに対する2段階目の手続きを追加することができるようになります。

アクセスプロバイダが早期に分かることによって、裁判所に対して、アクセスプロバイダに対する発信者情報の消去禁止命令発出を求めることもできるため、保存期間経過による特定不能のリスクが解消されることも期待できます。

 

 また今回の改正では、これまで開示対象として明確ではなかった「ログイン時のIPアドレス等の情報」(特定発信者情報)についても、一定の要件のもと開示が認められることとなりました。

このように、今回の改正は、従前の制度上指摘されていた発信者特定の問題点を改善する内容になっています。とはいえ、IPアドレスから辿ることができるのは、アクセスプロバイダの契約者情報までですので、ビルオーナーが1棟全体のインターネット契約をしている賃貸マンションや、フリーWi-Fiその他の公共のネット環境、インターネットカフェなど、投稿者が特定できず、損害賠償請求を断念せざるを得ない場合は残念ながらあります。

また、実際に削除請求や発信者情報開示請求が認められるためには、当該投稿が真実に反するなど、名誉棄損等に該当すると認められる要件を備えていることが必要であり、専門的な判断が必要になります。裁判では疎明資料も必要になるため、準備可能な証拠としてどのようなものがあるかも打ち合わせをしながら明らかにしていきます。

 

発信者特定についてはできるだけ早期に動き出すことが大切ですので、お早めに弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。

熊本本店 弁護士 岡井将洋

 

【判例紹介】東京電力13兆円判決  ―東京地判令和4年7月13日―

第1 事案の概要

東日本大震災に伴う津波によって、東京電力が設置、運転する福島第一原発において、原子炉から放射性物質が大量に放出する事故 (本件事故)が発生しました。本件は、東京電力の株主である原告らが、取締役であった被告ら5名に対し、任務懈怠により本件事故が発生し東京電力に損害を被らせたなどと主張し、株主代表訴訟(会社法847条1項)を提起したものです。結論として、東京地裁は、被告らのうち4名に対し、東京電力に13兆3210億円を支払うよう命じました。

第2 本件の争点

本件は、①予見可能性の有無、②任務懈怠の有無、③任務懈怠と本件事故発生の因果関係が主な争点となりました。

第3 裁判所の判断(要約)

1 予見可能性の有無について

裁判所は、国が発表した「長期評価」が相応の科学的信頼性のある知見であると判断し、これに基づく明治三陸試計算結果等も津波の予見可能性を認めるに足りる相応の科学的信頼性があると事実認定しました。また、特段の事情がない限り、原子力事業を営む会社の取締役は「長期評価」の知見に基づき対策を講じる義務があると判断しました。

2 任務懈怠の有無について

裁判所は、まず、原発の安全性や健全性に関する評価及び判断は、極めて高度の専門的かつ技術的事項が多いため、原発を設置、運転する会社の取締役としては、会社内外の専門家や専門機関の評価ないし判断が著しく不合理でない限り、これに依拠することが相当であり、これらの評価ないし判断があるにもかかわらず、特段の事情もないのに、これと異なる評価ないし判断を行った場合には、その判断の過程、内容は著しく不合理と評価されるという一般論を述べました。そのうえで、被告らは、前述の「長期評価」等の見解について、社内の専門部署の説明等に依拠せず、これに反する独自の判断を行ったと事実認定し、過酷事故が発生する可能性があったこと等を認識し、又は容易に認識し得、また、過酷事故に至る事態が生じないための最低限の津波対策を速やかに実施するよう指示等をすべき取締役としての善管注意義務があったのに、これをしなかった任務懈怠があると判断しました。

3 任務懈怠と本件事故発生の因果関係

裁判所は、被告らのうち4名については、津波の襲来を想定し、対策を速やかに講ずるよう指示等していたならば、本件事故を回避し得たであろうとして任務懈怠と本件事故発生との間には因果関係を肯定しました。他方で、被告らのうち1名については、本件津波の襲来時までに措置を講ずることが時間的に可能であったとはいえず、任務懈怠と本件事故発生との間の因果関係はないと判断しました。

第4 取締役の責任

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと規定されています(会社法423条)。もっとも、取締役らの業務執行には迅速な判断を求められるため、事業執行を行った時点において事実の認識や意思決定の過程に不注意がなければ広い裁量を認めるという「経営判断の原則」を適用し、任務懈怠を検討するのが実務上確立されています。本件でも、経営判断の原則を適用し任務懈怠が検討されましたが、いずれの取締役にも任務懈怠が肯定されています。また、本件では、取締役のうち1名については、任務懈怠と本件事故の間の因果関係が否定されましたが、このように、取締役の会社に対する任務懈怠責任の検討の際には、任務懈怠の有無だけでなく損害の発生との因果関係の検討も重要になります。本判決は控訴されたため、高裁での判断も引き続き注目したいと思います。

東京オフィス 弁護士 石川琴子

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