お知らせ
事業所報
2026/04/20
Author :アステル
THE ASTER TIMES 2026.4 vol.48
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「対策なし」は法違反。カスハラ義務化。
—社員を孤立させない組織づくり—
1 はじめに
いよいよ新年度がスタートしました。4月は新入社員が加わり、組織が新たな活気に包まれる時期です。こうした中、企業経営において避けて通れない課題が「カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)」の対策です。
労働施策総合推進法の改正により、令和8年10月1日以降、全ての企業において、カスハラ対策を講じることが義務化されます。特に新入社員は、経験不足等からカスハラの標的にされやすい傾向があります。会社の未来を担う人材を守るために企業に求められるカスハラ対策について、以下で解説します。
2 企業に「義務化」される具体的項目
法改正により、事業主は主に以下の措置を講ずる義務を負います。
⑴ 事業主の方針の明確化と周知・啓発
「何がカスハラに該当するか」を明確に定義し、会社として毅然とした対応をとることや、予め定めた対処法を明確に周知する必要があります。そのため、就業規則や社内規程への明文化が必須となります。
ちなみに、令和8年10月1日施行予定の改正労働施策総合推進法第33条第1項は、カスハラを「職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されること」と定義しています。
⑵ 相談に適切に対応するために必要な体制の整備
カスハラ発生時に社員が躊躇なく報告できるよう、相談窓口を設置しなければなりません。単に窓口を作るだけでなく、相談者のプライバシー保護や、相談を理由とする不利益な取り扱いを禁止することの徹底などが求められます。
⑶ 事後対応と再発防止
カスハラ発生時には、事実関係を迅速に確認し、被害者のメンタルヘルスケアや、再発防止に向けて「組織的な救済」を行う体制を整える義務があります。
3 会社や社員を守るために
カスハラの加害者は相手の「隙」を突く傾向があり、初期対応のミスを執拗に攻め立て、過度な謝罪や金品を要求するケースも少なくありません。
会社が対策義務を怠り、社員が精神疾患を患ったり離職したりした場合、会社に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を問われるリスクも生じます。
そのため、カスハラから社員を「組織的に」守る姿勢を示すことが不可欠です。
4 おわりに
カスハラ対策の本質は、「現場の従業員を一人で戦わせないこと」にあります。
「これ以上は不当要求である」という一線を会社が明確に引き、現場に判断を丸投げしない体制を構築することが、優秀な人材の定着に繋がります。
当事務所では、カスハラ対策を含む社内規程の整備や、具体的な対応マニュアルの策定支援も行っております。ご不安な点がございましたら、ぜひ弁護士法人アステル事務所にご相談ください。
熊本本店 弁護士 金子善幸
はじまります!日本版DBS ~こどもを性犯罪から守る仕組み~
1 令和8年12月25日施行!
令和6年6月19日に成立し、同月26日に公布されたこども性暴力防止法が、ついに今年12月25日に施行されます。こどもに関連する事業を行っている皆様、「こまもろう」マーク(認定・法定事業者マーク)取得の準備は進んでいるでしょうか。施行に先立ち、今年4月からは事業者情報の登録も開始されます。
“要するに性犯罪のデータさえ確認しておけばいいんですよね?”
いいえ、それでは足りません。各種規程の整備や書類の改訂が必要です。既に、今年の新入職員から新法に準拠した対応を開始している事業者も見受けられます。遅れを取っていないでしょうか。
2 施行までに整えておくべき項目
⑴初犯対策
①日頃からの安全確保措置(児童との面談、相談体制整備)→面談の頻度や相談窓口は決まっていますか?
現在行っている定期的な面談において確認を実施するのであれば、面談時に用いるシート等にチェック項目を入れておきましょう。
②被害が疑われる場合の措置(調査、保護・支援)→被害申告があった際の流れは確認できていますか?
③職員研修→上記①②が整ったら、研修を実施して何が「不適切な行為」に当たるかの確認や、上記①②の内容について周知を行いましょう。
⑵再犯対策
性犯罪前科の有無確認(5年ごと。ほか、雇入れ等による入職時、法定事業者の現職者は施行から3年以内、認定事業者の現職者は認定から1年以内)
【上記確認に先立ち整備すべきもの】
①児童性暴力等対処規程→「不適切な行為」として何を 掲げるか決まっていますか?
②職員の意向確認書(犯罪事実確認記録等を保持管理するためのもの)
③募集要項や求人票の特記事項等の記載→採用条件に、特定性犯罪前科がないことを明示していますか?
④採用・入職時の誓約書・内定通知書の記載→採用・入職にあたって書面で特定性犯罪前科がないことを明示的に交わしていますか?内定取消事由として「重要な経歴の詐称」を明記していますか?
⑤就業規則上の試用期間中の解約事由や懲戒事由→「重要な経歴の詐称」が定められていますか?
⑥情報管理規程→犯罪事実確認記録等の管理責任者や管理方法は決まっていますか?
3 おわりに
子どもが被害者となる性犯罪(不同意性交等、不同意わいせつ)の認知件数は年3000件近くにのぼり、児童ポルノ事犯(わいせつ画像撮影等)の検挙件数も年3000件を超えています。
上記各書類のひな型等は、こども家庭庁のWebサイト(以下QRコード)で公開されています。大切なのは、そのひな型を各事業者の実態に合わせて整えておくことです。
そして、いざ被害申告等が寄せられた際の対応について、
・誰がどのように事実確認を実施するのか
・どのように記録を残すのか
・どこに報告すればよいのか
・申告のあった当該職員をどうやって接触回避させるのか
といった流れを検討しておく必要があります。
体制を整えておくことで、被害の発生や拡大・悪化を食い止めることができます。それは、子どもや保護者を守るのはもちろんのこと、職員やその職場環境を守ることにも繋がります。
実際に被害申告があった際には、事案により具体的な対応が異なり、その対応に悩むことも多く生じるかと思います。そのような際には、どうぞ遠慮なく弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください。
熊本本店 弁護士 福井春菜
職種限定合意がある場合の配転命令に関する留意点
~最判令和6年4月26日-社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件を参考に~
第1 事案の概要
Xは、Yの前身(その後Yに権利義務が承継される。)に福祉用具センターにおける福祉用具の改造・制作、技術の開発に係る技術職として雇用されて以降、18年間にわたり技術職として、また、Yの溶接のできる唯一の技術者として勤務していた。なお、この雇用契約に関し、Xの職種を技術者に限るとの書面による合意はなかった。Yが行っていた福祉用具の改造及び製作の実施件数が減少していた状況を受け、YはXに対し、事前の打診なく、配置転換命令を行った。
Xは、書面等に明示されていないものの、YがXを技術職として就労させる旨の黙示の職種限定合意があり、この合意に反する配転命令は違法であると主張して、Yに対し債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求等を行った。
第2 争点
職種限定合意がある場合、使用者が配転命令権を有するか否か。
第3 判旨
最高裁は、「労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと解される。」として、YはXに対し、その同意を得ることなく配置転換を命ずる権限をそもそも有していなかったと判断した。
第4 解説
1 本判決の判断
本判決は、前記のとおり、職種限定合意がある場合において使用者は労働者の個別的同意なしに職種限定合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと判示しました。つまり、明示又は黙示を問わず、職種限定合意がある場合、使用者には、労働者の個別的同意がないときはそもそも配転命令権すら存在しないということになります。
2 実務上必要な対応
⑴職種限定合意への対応
職種限定合意とは、労働契約において、労働者を一定の職種に限定して配置し、当該職種以外の職種には就かせない旨の使用者と労働者との合意をいいます。これは、契約書等で明示される例が必ずしも多くはなく、黙示の合意があると認定されることが多かったため、使用者としては職種限定合意がないことを前提に配置転換を命じても、裁判になって職種限定合意が事後的に認定されるリスクがあります。そこで、使用者としては、職種限定の意図がない労働者の雇い入れについては、将来の配置転換を見越して、雇入れ時に明示すべき労働条件の「従事すべき業務」の「変更の範囲」を幅広く明示する対応をすることが考えられます。
⑵労働者から同意を得る場合の留意点
労働者に不利益をもたらす可能性のある事項についての同意については、労働者の「自由な意思に基づく同意」が必要であるとして、その同意の有効性が厳格に判断される傾向にあるため、同意を得る手続も慎重に行う必要があります。
⑶労働者が配置転換に応じない場合の留意点
本判決によれば、職種限定合意がある労働者については、解雇があり得る状況であっても、その同意なく配置転換することはできないことになります。労働者が配置転換に応じないことを理由に解雇を選択する場合、その有効性は、職種限定合意のない配転拒否を理由とする普通解雇ではなく、整理解雇(人員削減)の枠組みで判断されることになると考えられます。配置転換を試みることは、解雇回避努力の一事情として考慮されうるため、解雇を選択する場合でも、手続は慎重に進める必要があります。
以上のように、職種限定合意のある労働者の配置転換を巡っては、労働法上の様々な問題が複雑に絡み合うことになります。疑問が生じた際には、ぜひ弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。
熊本本店 弁護士 吉永考志
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