アステル法律事務所 熊本の弁護士法人アステル法律事務所

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事業所報

2026/10/13

著者Author :アステル

THE ASTER TIMES 2026.10 vol.49

 

熊本地震と事業者対応  法務・労務・資金繰りのポイント

1 令和8年7月28日の令和8年熊本地震により被害を受けられた皆様に、お見舞いを申し上げます。本号では、事業者の皆様において検討を要する法的論点を、契約・労務・資金の3点に整理してご説明いたします。

 

2 第一に、契約関係です。

地震により債務の履行が不能となった場合、その帰責事由の有無が問題となります。契約書に不可抗力条項が置かれている場合は、地震が定義に含まれるか、通知義務や解除権発生までの猶予期間がどのように定められているかを確認する必要があります。条項が存在しない場合には、履行不能、危険負担、事情変更等の一般原則により処理されますが、結論は個別事情に左右されます。賃貸借については、賃借物の一部が使用できなくなった場合の賃料の当然減額、建物全部滅失による賃貸借の終了といった規律が問題となり、実務上は減額割合の算定が争点となりやすい部分です。相手方との交渉が難航する場合、熊本県弁護士会紛争解決センターの災害ADR(本地震に関する申立ての手数料は無料)の利用も選択肢となります。

 

3 第二に、労務です。

操業停止に伴う休業について、天災事変を原因とする場合は使用者の責めに帰すべき事由に当たらないと解される場合が多く、その限りで休業手当の支払義務は生じないと考えられますが、代替業務の可能性等を踏まえた個別判断が必要です。雇用調整助成金については特例措置が講じられており、生産指標の確認期間が3か月から1か月に短縮されています。また、災害対応では、一部の従業員が復旧作業などで残業する一方、別の従業員は仕事がなく休業せざるを得ないという事態が生じうることを踏まえて、残業相殺の取扱いが撤廃されています。被災地以外の事業所についても、経済上の理由による事業活動の縮小があれば対象となり得ます。併せて、余震下における就業や復旧作業に関する安全配慮義務の履行状況を、記録を含めて点検しておくことをお勧めします。

 

4 第三に、資金です。

政府は令和8年8月27日、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージを決定し、施設・設備の復旧に対する補助、災害復旧貸付の金利引下げ、別枠の信用保証、既往債務を抱える事業者への支援等を掲げています。要件と申請期限は制度ごとに異なりますので、早期の確認が必要です。

 

5 当事務所では、震災に関連する事象についての法的助言にも対応しております。ご必要の際はご連絡ください。

八代オフィス 弁護士 中松 洋樹

 

令和8年12月施行!改正公益通報者保護法と中小企業が取るべき対応

第1 高まるコンプライアンス経営の重要性

フジテレビやビッグモーターなど、コンプライアンス違反が問題となっている事件を目にする機会が増えました。法令や社会通念に違反した事業活動は、法的な制裁を受けるだけにとどまらず、会社の社会的信用を大きく棄損し、事業運営自体に極めて深刻な影響を及ぼす恐れがあります。コンプライアンス経営の重要性は、経営者の皆さんも感じていらっしゃるところではないでしょうか。

 

公益通報者保護法は、令和7年に改正されており、令和8年12月1日から施行されます。今回の改正は、通報者への報復行為に対する刑事罰の導入やフリーランスへの保護拡大などが含まれており、企業のコンプライアンス体制に大きな影響を与える内容となっています。

 

法律で定められた内部通報体制(窓口設置等)の整備義務は、常時使用する労働者が300人を超える企業に義務づけられており、300人以下の法人においては「努力義務」とされています。しかし、熊本県内に多い中小企業において、「うちは努力義務だから対応しなくても大丈夫」と放置するのは非常に危険です。

第2 内部通報制度を構築するメリット

内部通報制度を構築する最大のメリットは「自浄作用による不祥事の早期発見・火消し」です。社内の制度として信頼できる通報窓口があれば、コンプライアンス違反が深刻化する前に社内で発見し、是正できます。また、健全な自浄能力を持つ企業として従業員の安心感や取引先・社会からの信頼が高まり、企業価値の向上にもつながります。さらに、制度を構築することをきっかけとして、役員や従業員に対してコンプライアンスの意識付けを行い、より適法・適切な日常の業務を行うよう指導できるようにもなります。他方で、社内窓口がない場合、コンプライアンスに違反する行為を認識した従業員は、最終的には外部(行政機関や報道機関、SNS等)に直接通報せざるを得なくなります。

 

 

SNSやメディアで一度情報拡散が起きると、企業の信用失墜や売上減少、採用難など甚大な打撃を受けかねません。早期に、社内での自浄作用を機能させるためには、内部通報窓口を社内に設置することが有用なのです。

 

 

さらに改正法では、通報妨害や通報者探索の禁止、通報後1年以内の不利益処分に対する厳格な罰則等も整備されています。社内に適切な制度運用がないままトラブルが生じた際、企業が負う法的なリスクや対応コストは跳ね上がります。

 

第3 貴社の体制整備・社外窓口設置はアステル法律事務所へ

会社内で制度をより有効に機能させるには、社内規程の整備だけでなく、従業員が安心して相談できる「社外窓口」の設置が極めて効果的です。

 

 

アステル法律事務所では、会社の規模に応じた内部通報制度の構築や社外窓口の設置支援を行っています。先日は、顧問先企業において、制度構築後にコンプライアンスの意識付けを行う社内研修の講師も務めさせていただきました。

 

 

公益通報者保護法改正のタイミングは、コンプライアンス経営の体制を整える良い機会になると感じます。これを機に、内部通報制度を備えてみてはいかがでしょうか。当事務所にお気軽にご相談ください。

熊本本店 弁護士 岡井 将洋

 

改正労働施策総合推進法の概要 〜カスハラ問題〜

第1 はじめに

令和8年10月1日施工の改正労働施策総合推進法により、事業主にはカスタマーハラスメント(カスハラ)対策や求職者等へのセクシュアルハラスメント対策が義務化されます。今回は、カスハラ対策について、解説します。

第2 カスハラの定義と判断基準

職場におけるカスハラとは、以下の⑴〜⑶の要素を全て満たすものを指します。

 

⑴ 顧客等の言動であること

顧客、取引相手、施設利用者のほか、今後商品の購入 やサービス等の利用をする可能性がある者も含まれます。

 

⑵業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えた言動であること

社会通念に照らし、当該顧客等の言動が契約内容からして相当性を欠くもの又は手段や態様が相当でないものを指します。

言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるものとして、要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求、契約等により想定しているサービスを著しく超える要求、対応が著しく困難又は対応が不可能な要求があります。

手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるものとして、身体的・精神的な攻撃や威圧的言動があります。

 

⑶ 労働者の就業環境が害されること

言動による身体的・精神的苦痛により、就業環境が不快なものとなり、労働者が就業する上で看過できない支障が生じる状態を指します。

 

第3 事業主が行うべき義務

事業主は、以下の措置を必ず講じなければならないことになっています。

⑴ 事業主の方針等の明確化・周知

①カスハラに対して毅然とした態度で対応し、労働者を保護する方針を明確化し、周知・啓発すること。

②カスハラの内容及びあらかじめ定めた対処の内容を、労働者に周知すること。

 

⑵ 相談体制の整備

相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知し、相談担当者が適切に対応できる体制を整えること。

 

⑶ 事後の迅速かつ適切な対応

①事案発生時は事実関係を迅速かつ正確に確認する。

②被害者に対する配慮のための措置を適正に行う。

③再発防止に向けた措置を講ずる。

 

⑷ カスハラ抑止のための措置

特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針をあらかじめ定め、それを実行できる体制を整備する。

 

⑸ その他の併せて講ずべき措置

①相談者等のプライバシー保護のために必要な措置を講じ、周知する。

②相談や事実確認に協力したこと等を理由とする不利益な取扱い(解雇など)を禁止し、周知・啓発する。

 

第4 事業主の責務

前記の事業主の義務のほかに、労働者が、他社の労働者に対する言動にも注意を払うよう、研修の実施、その他必要な配慮をすること等も事業主の責務とされています。

以上のように、令和8年10月1日から施行された改正労働施策総合推進法では、カスハラ問題について、事業主の義務と責務を定めており、事業主の皆様は対応を行うことが必須となります。前記義務を事業主として、具体的にどのように行っていけば良いか疑問が生じた際は、ぜひアステル法律事務所にご相談ください。

熊本本店 弁護士 吉永 考志

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