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労働法トピックス

2018/02/16   労働時間   労働法トピックス   賃金・手当  

医師の年棒制における定額残業代の有効性~最高裁平成29年7月7日判決~


平成29年7月には、厚労省に医師の働き方改革推進本部が設置され、平成29年8月からは、医師の働き方改革に関する検討会が実施されています。

医師の働き方、主に労働時間管理について注目されているところです。
今回は、医師の労働時間や時間外手当に関する判例をご紹介します。

 本件は、病院、介護老人保健施設等を運営する医療法人Yに雇用されていた医師Xが、Yに対し、解雇は無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めるとともに、時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金並びにこれに係る付加金の支払等を求めた事案です。

 Xについては、年俸1700万円で、①本給(月額86万円)、②諸手当(役付手当、職務手当及び調整手当の月額合計34万1000円。)、③賞与(本給3か月分相当額を基準として成績により勘案する。)により構成されます。
 Xは、週5日勤務で、1日の所定勤務時間は、午前8時30分から午後5時30分まで(休憩1時間)を基本とするが、業務上の必要がある場合には、これ以外の時間帯でも勤務する必要があり、その場合における時間外勤務に対する給与については、Yの医師時間外勤務給与規程の定めによるものとされていました。
 時間外規程では、①時間外手当の対象となる業務は、原則として、病院収入に直接貢献する業務又は必要不可欠な緊急業務に限ること、②医師の時間外勤務に対する給与は、緊急業務における実働時間を対象として、管理責任者の認定によって支給すること、③時間外手当の対象となる時間外勤務の対象時間は、勤務日の午後9時から翌日の午前8時30分までの間及び休日に発生する緊急業務に要した時間とすること、④通常業務の延長とみなされる時間外業務は、時間外手当の対象とならないこと、⑤当直・日直の医師に対し、別に定める当直・日直手当を支給すること等を定めていました。
 最高裁は、時間外労働等の割増賃金を定める労働基準法37条の趣旨について、「時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される。」とした上で、割増賃金をあらかじめ基本給や諸手当に含める方法で支払うこと自体が労働基準法37条に反するわけではないとしました。他方において、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であることを示しました。
 そして本件については、XY間で、本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金を年俸1700万円に含める旨の本件合意がされていたものの、このうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかったため、Yに支払われた賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することすらできないから、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできないとして、年俸の支払により、上告人の時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできないと判断しました。

 本件は、第1審と原審が、1700万円という好待遇や医師としての職務や責任に照らした合理性を理由として、年棒に割増賃金が含まれるとした判断を覆したものとして注目されます。

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