企業法務トピックス
2017/03/27 企業法務トピックス 新法・法改正・判例紹介トピックス 新法・法改正・新判例紹介 法改正
経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂
平成28年6月3日,経済産業省は,「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました。この準則は,電子商取引の法的問題点について,取引当事者の予見可能性を高め,取引の円滑化を図ることを目的として平成14年3月に策定され,その後,改訂が行なわれてきました。
今回の改訂も多岐に渡っていますが,今回の改訂事項のうち,インターネットビジネスの実務において知っておくべきポイントについて,解説致します。
1「未成年者による意思表示」の改訂
未成年者が法定代理人の同意を得ずに行なった法律行為は原則として取り消すことができますが,未成年者が取引の相手方に対して成年者であると誤信させるために「詐術を用いた」場合には,取消権を失うとされています(民法21条)。
インターネット取引において,この未成年者が詐術を用いたといえるか否かの判断について,記述が追加されました。そのポイントとしては,未成年者が詐術を用いたといえるためには,「『未成年者の場合は親権者の同意が必要である』旨を申込み画面上で明確に表示・警告した上で,申込者に生年月日等未成年者か否かを判断する事項の入力を求めているにもかかわらず未成年者が虚偽の生年月日等を入力したという事実だけでなく,さらに未成年者の意図的な虚偽の入力が『人を欺くに足りる』行為といえるのかについて他の事情も含めた総合判断を要すると解される。」とされています。総合判断において考慮する事情としては,未成年者の年齢や,商品等の性質,警告画面の表示内容,年齢確認の仕組み等が挙げられています。
2「ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任」の改訂
違法情報をインターネット上で閲覧可能にした事業者の削除義務について,裁判例において見解が分かれており,改訂前の準則においては,(a)違法な情報の流通を知り又は知り得た場合には直ちに削除する義務があるとして広く削除義務を認める基準を採用するものと,(b)事業者が発信者である,権利侵害が明白である等,例外的な事情がない限り削除義務を負わないとする制限的に責任を認める基準を採用するものと,大きく裁判例が二分されていると指摘されていました。
今回の改訂において,この点に関する産能大学事件(東京地裁平成20年10月1日判決)の(c)サイトの目的,管理体制,被害者が採り得る救済手段の有無,名誉毀損の態様や程度等を総合して個別具体的に判断すべきとする裁判例が追記されました。
3 「データ消失時の顧客に対する法的責任」の追加
クラウドサービス事業者が,顧客のデータを消失した場合の法的責任に関する論点が追加されました。
クラウドサービス事業者が,顧客のために保管するデータの消失を防止する契約上の義務違反により顧客のデータを消失させたときには,顧客に対して債務不履行によりデータ消失による損害を賠償する責任を負うとされています。データ消失による損害としては,一般的には,①消失したデータの復旧・再構築費用(又は,復旧が不可能な場合のデータの取得原価)や,②顧客が事業者の場合のデータ消失によって生じる顧客の事業の支障による逸失利益が考えられる,と解説されています。
もっとも,クラウドサービスについて顧客側にもバックアップを行なうべき注意義務がある場合には,顧客がバックアップを作成していないことは,過失相殺の事由となるとされています。
また,クラウドサービスの利用規約(約款)には,データ消失による損害についての責任制限や免責が定められていることが多いですが,顧客が消費者の場合には,消費者契約法により,責任の完全な免除や故意・重過失による損害に対する責任の一部免除を定める条項は無効とされますが,顧客が事業者の場合には,消費者契約法の適用がないため,責任制限や免責に関する条項は基本的には有効と考えられると解説されています。
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