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2017/11/20   企業法務トピックス   判例紹介   新法・法改正・判例紹介トピックス   新法・法改正・新判例紹介  

中小企業における営業秘密の保持 -東京地裁平成29年10月25日判決


中小企業にとって、取引先を1つでも失うことは大きな営業上の損失につながりかねません。会社としては、会社と社員との間で機密事項を漏えいしない旨の誓約書を書かせて(秘密保持に関する合意)、取引先等の機密情報の管理をするというのが一般的でしょう。

しかし、その誓約書はいざというときに本当に使えるものでしょうか。

 

以下、A社(資本金5000万円、役員4名、社員8名)における秘密保持について、A社の元社員がB社に転職後、A社の取引先等の機密情報をB社に開示し、これを利用してA社の取引先に対する営業等を行ったとして、A社が元社員やB社に5000万円超の損害賠償請求をした事例を紹介します。

 

A社は、元社員との間で、「在籍中はもとより退職(退任)後においても、業務上知り得た次に掲げる機密事項を会社外の第三者に対して漏えいせず……当該機密事項を用いての営業、販売行為は行わない」との秘密保持の合意をしていました。

そして、「機密事項」として、①経営上、営業上、技術上の情報一切、②取引先に関する情報の一切、③取引条件など取引に関する情報の一切、④その他機密事項として指定する情報の一切、がその内容であると規定していました。

 

A社が元社員が漏えいした「機密事項」として主張したのは、得意先・粗利管理表、規格書、工程表、原価計算書です。

しかし、裁判所は、秘密保持条項の対象が「機密事項」(すべての秘密ではなく重要な秘密)であること、上記④の包括規定で「指定する」ことが前提とされていることから、「機密事項」にあたるというためには、(ア)公然と知られていないこと、(イ)原告の業務遂行にとって一定の有用性を有すること、(ウ)会社において従業員が秘密と明確に認識しうる形で管理されていること(秘密管理性)を要するとしました。

ポイントは要件(ウ)の秘密管理性です。

本件では、下記のような各情報の管理状況から、A社の主張した情報はいずれも秘密として管理していたとはいえないと判断されました。

<規格書、工程表、原価計算書>

・社員各自のコンピュータからアクセス可能なサーバに保管されていて、閲覧・印刷・複製できる状態にあったこと。

<得意先・粗利管理表>

・社員全てがアクセスすることができないような形で保管されていたことを客観的に示す証拠はないこと。

・管理表自体に「社外持ち出し禁」との記載はなく、これを記載した表紙を付けて配布されたことを裏付ける証拠もないこと。

 

本件でA社は、小規模な会社であって事業遂行のために取引に関する情報を共有する必要があるから、社員全員が機密情報に接することができたとしても秘密管理性は失われないと主張しましたが、その主張は通りませんでした。

 

このような結果になるのを防ぐには、まず、誓約書等の文書に、対象となる文書を具体的に記載すべきでしょう。

もっとも、全てを記載することは困難ですし、本件のように実際の管理状況が問われることになります。

たとえ小規模な会社であっても、社員各自のコンピュータからのアクセスを制限したり、「社外持ち出し禁」など機密情報であることを明確に示す記載をしたりといった管理を行う必要があるでしょう。

 

 

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