企業法務トピックス
2017/03/27 企業法務トピックス 判例紹介 新法・法改正・判例紹介トピックス 新法・法改正・新判例紹介
【新裁判例紹介】再雇用後の職種変更に関して損害賠償義務を認めた事例
平成28年9月28日,名古屋高等裁判所は,トヨタ自動車において事務職として稼働していた元従業員(以下,「本件従業員」といいます。)に対し,定年退職後の再雇用の職種として清掃業を提示したことは不当であるとして,トヨタ自動車に対して約127万円の損害賠償を命じました。
この事案は,トヨタ自動車において主に事務職として稼働していた本件従業員が,60歳となって定年退職するにあたり,同社において選定基準を満たした者に対して提示される「スキルドパートナー」と呼ばれる再雇用契約(雇用期間は最長5年間)ではなく,期間1年間の清掃業務の雇用を提示したことが違法であるとして,スキルドパートナー事務職従業員としての地位確認や慰謝料等を求めたものです。
原審は本件従業員の請求をいずれも棄却しましたが,名古屋高等裁判所は,本件従業員が実質的に60歳から61歳まで雇用継続する機会を奪われたと認め,本件従業員が1年間再雇用されていた場合に約127万円の賃金を得ることができたと認め,この金額を慰謝料として支払うべきと判断しました。
高年齢者雇用安定法(以下,「高年法」といいます。)は,労働者の65歳までの雇用を確保させる趣旨から,使用者に対し定年後の再雇用制度の導入を義務付けています。名古屋高裁は,高年法の趣旨は,60歳定年後に無年金・無収入期間が発生することを防止することにあるとした上で,再雇用における労働条件が,到底容認できないような低額の給与水準であったり,社会通念に照らし,労働者にとって到底受け入れ難いような職務内容を提示するなど,実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない場合においては違法であるとしました。そして,60歳以前と異なった業務内容を示すことが許されないわけではないが,定年前と定年後再雇用の職種が全く別個の職種に属するなど性質が異なったものである場合には,継続雇用の実質を欠いていると判断しました。その上で,トヨタ自動車が日本有数の巨大企業であり,事務職としても多種多様なものがあることも考慮して,清掃業務以外に提示できる事務職業務が存在するかについて十分な検討を行っていないとして損害賠償の支払いを命じたものです。
定年後の再雇用にあたっては,給与の変更はもちろん,職務の変更も検討されると思いますが,定年後再雇用にあたって提示する職種が,高年法の趣旨から社会通念上相当性を欠く場合には違法と判断されることもありますので,注意が必要です。
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