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お知らせ

事業所報

2017/04/11

著者Author :下山 和也

THE ASTER TIMES 2017.04 vol.12 

 

 


# 従業員の身元保証人の法的責任      弁護士 平島有希
# セミナーコラム             弁護士 岡井将洋
# 判例紹介                弁護士 福井春菜


従業員の身元保証人の法的責任                弁護士 平島有希

 始まりました新年度! 新年度の開始に伴い,企業では異動の時期を迎えておられることと思います。 従業員が入社するに際して身元保証書の提出を求める企業もたくさんあるかと思います。

身元保証とは?

 身元保証には,単に人物の保証という意味合いしか持たない場合と,法的に意味のある場合とがあります。後者は,従業員の行為によって会社が被った損害を賠償することを約束すること(身元保証に関する法律(以下「身元保証法」といいます。)1条)を言います。身元保証人の責任の範囲が広範であるにもかかわらず,安易な身元保証契約が締結されることが多いため,身元保証法においてその責任の範囲が制限されています。

 

 なお,労働基準法16条により,労働契約の債務不履行について,違約金を定めたり,損害賠償額を予定する契約は禁止されますが,損害賠償額を予め約定せず,現実に生じた損害について賠償を求めることは禁止されません。

 身元保証契約の締結及び運用にあたっては,以下の点に注意することが必要です。

注意点

①期間

 期間の定めがない場合は3年(商工見習いの場合は5年),定めがある場合でも5年を超えることはできません。

通知義務

 身元保証人に責任を惹起するおそれのある労働者の業務上不適切な事実が分かった場合や,社員の勤務地や仕事の内容を変更して保証人の責任を加重する場合には,その旨を通知しなければなりません(身元保証法3条)。この通知を受けた身元保証人は,責任が持てないと判断する場合,身元保証契約を解除することができます(身元保証法4条)。

③更新

 身元保証契約期間は上述のとおりですので,自動更新特約を付けることを希望する企業もあります。しかし,自動更新特約は無効とされていますので,改めて契約を締結する必要があります。更新後の期間も5年を超えることはできません。

身元保証人の責任範囲・制限

 裁判所が身元保証人の責任の範囲を検討するにあたっては,企業側の過失,保証するに至った経緯,その他一切の事情を考慮するものとされています(身元保証法5条)。また,会社の従業員に対する求償権の行使(民法715条3項)について,最判は,会社は,その事業の性格,規模,施設の状況,従業員の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防もしくは損失の分散についての企業の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において,従業員に対し損害の賠償または求償の請求をすることができるとしていますので(最判昭和51年7月8日),損害の全額について従業員に対し求償できるものではありません。そのため,会社が,従業員の行為によって損害を被った場合に,裁判所が身元保証人の賠償義務を認める範囲は,従業員に対する求償権が認められる損害のうち,保証期間にかかるもので,かつ会社側の過失や,身元保証に至った経緯等を考慮して限定するということになります。

まとめ

 会社が,身元保証契約を求めるにあたっては,期間制限規定があることや損害賠償額予定規定は無効であることに注意をしてください。また,運用にあたっては,通知義務の履行や,更新手続きにご留意ください。身元保証は,従業員に対して,入社時における心理的効果面で有用かもしれません。一方で,保証期間経過後に再度の身元保証契約を締結するか否かは,身元保証契約締結にかかる労や担保される損害の範囲を考慮して検討する必要があります。年度初めで身元保証書を始め,会社が第三者と締結する契約書等も様々かと存じます。契約書等の作成につきましても,ぜひ,当事務所にご相談ください。

コラム-改正個人情報保護法-                  弁護士岡井将洋

 個人情報保護法は,平成15年に成立しましたが,情報通信技術の進展やスマートフォンの普及等に対応するため,平成27年に改正されました。

 

 改正法では,「個人情報」の定義の明確化や,名簿業者への規制等が改正されていますが,最も重要な点は,改正前には適用対象ではなかった5000件以下の個人情報取扱業者も,全て適用対象となったことです。
 そのため,従前個人情報に関するコンプライアンスを行っていなかった中小企業でも,関連する法規やガイドライン等に従った対応を行う必要があります。
 保護対象となる「個人情報」は,生存する個人に関する情報で,特定の個人を識別することが出来るものとされており,氏名や生年月日のほか,基礎年金番号やマイナンバーなどが含まれます。会社の顧客や従業員の名簿が保護対象となることはもちろん,その他の業務上,保護対象となる「個人情報」がないか洗い出す必要があります。

 

 その上で,①取得・利用のルール,②保管のルール,③第三者に渡す際のルール,④本人から開示を求められた時のルールを守らねばなりません。この点,特に個人情報を利活用することを想定していない中小企業においては,効率的な対応を行うことも可能です。
 改正法では,個人情報保護委員会が事業者の法遵守の状況を監督することとされており,必要に応じて報告を求め,立会検査を行うなど,指導・助言,勧告,命令を行うこととされています。事業者は,命令に違反した場合や虚偽の報告をした場合に,懲役刑や罰金刑の罰則が科せられることとなります。
 個人情報の漏えいは,法律上の義務違反等が発覚する可能性があるだけでなく,個人情報の本人に対する民事賠償責任が生じる可能性や,企業の評価を低下させるというリスクをはらんだ問題ですので,必要かつ十分な対応を取るべきです。

 

 施行が5月30日に迫っているため,まだ対応されていない企業においては,保護対象となる「個人情報」を洗い出し,早急な対策を講じることが迫られています。
 当事務所においては,下記の日程において,中小企業のための改正個人情報保護法セミナーを開催します。是非ご利用ください。

判例紹介 障害者の就労移行支援サービスにおける義務違反     弁護士福井春菜

~松山地方裁判所平成28年1月26日判決~

 

 現在,障害者自立支援法に基づく就労移行支援事業は,社会福祉法人だけではなく株式会社等においても行うことができるようになっています。この事件は,元々IT技術を活用した事業を行っていた株式会社が,就労移行支援事業に参画したものの,そのサービス提供が不十分だったとして債務不履行が認められたものです。
 裁判所は,就労支援サービス契約の契約に基づく法人側の義務として,①初回のアセスメント,②定期的モニタリングの実施,③随時の修正・変更を加えた個別支援計画の作成・共有,④利用者の意向に沿った実効性のある指導等(職場実習,就労支援及び求職支援)という4つの義務があるとしました。

 

 ①及び②は,支援の前提となる利用者の目標や達成状況等の把握の仕方に関する義務です。
 ①について,会社はアセスメントシートを作成しておらず手書きメモを残していたのみでしたが,2回の面談による就労意思の確認や障害状況等の確認を行っていたことから,義務違反があるとまでは認定されませんでした。
 他方,②については,会社が定期的なモニタリングによる利用者の希望等の確認をしていなかったこと等から,義務違反があるとされました。
 また,②の違反により,個別支援計画書に希望が十分反映されておらず,利用者本人の署名・押印もなかったこと,本人に計画書の交付すら行っていなかったことから,③の義務違反も認めました。
 そして,④について,②や③の義務違反にかかる事実が認定されたうえで,このため,実施された職場実習が利用者の意向を十分に反映したものでなかったと推認され,④の義務違反が認められています。加えて,面接の仕方や履歴書の書き方等の情報提供をしなかったことや,ハローワークへの同行をしなかったことについても,④の義務違反の内容として触れられています。

 

 この判決を踏まえると,②及び③の徹底が重要なポイントとなるでしょう。④の実効性のある指導がどういうものかという部分は,通常,判断が容易ではない部分ですが,②及び③が徹底されていなかったことから,④の違反もあっただろうと“推認”されています。
定期的なモニタリングを実施して利用者の意向を十分に確認したうえで,それを個別支援計画に随時反映し,計画内容について利用者に説明して共通認識を得たうえで計画書を交付するという手続きを徹底することが,利用者の意向を反映したサービスを提供していることを示す第一歩になろうかと思います。

 

 

次回セミナーのご案内 中小企業のための改正個人情報保護法対応

 

詳しくはホームページのこちらをごらんください。

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