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2018/04/13   企業法務トピックス   判例紹介   新法・法改正・判例紹介トピックス   新法・法改正・新判例紹介  

パワハラにより自殺した従業員について会社の損害賠償責任が認められた事例~加野青果事件 名古屋高裁平成29年11月30日 判決~


1 事案

  本件は、自殺により死亡した従業員A1の遺族A2らが、先輩従業員B1、B2が長期にわたりパワーハラスメントを繰り返し行い、C社はこれを放置し、A1に十分な引き継ぎを行わないまま配置転換を実施して過重な業務を担当させたことにより、A1はうつ病に陥り自殺に至ったとして、B1、B2については不法行為に基づく損害賠償請求を、C社に対しては債務不履行、不法行為(使用者責任を含む)に基づく損害賠償請求を行ったというものです。なお、A1の死亡については労災認定を受けています。
A1:高校卒業後、H21.4にC社に正社員として入社。
A2・A3:A1の父母
B1:大学卒業後、H8.4にC社に入社。営業事務等を順次担当していたが、C社の指示により、A1も所属する2階、3階の経理事務を担当。
B2:大学卒業後、H13.4にC社に入社。経理事務を担当し、C社から3階の女性従業員の指導を任されていた。
C社:卸売業者や仲卸業者から青果物を買い受け、スーパーマーケットなどへ販売する仲卸を目的とする株式会社。
 原審(名古屋地方裁判所平成29年1月27日判決)では、以下の点が認定され、精神的苦痛に対する慰謝料に限って、一部請求が認められました。
・B2がA1に対して「てめえ」、「あんた、同じミスばかりして」などと強い口調で叱責し、「親に出てきてもらうくらいなら、社会人としての自覚をもって自分自身もミスのないようにしっかりしてほしい。」と述べたことは不法行為に該当する。
・B2が、A1が配置転換後にも、頻繁に呼び出して、B2と共に叱責していたことは不法行為に該当する。
・配置転換と業務負担が自殺の原因であったとまでは認められない。
・仮に自殺の原因であったとしても、C社にはその予見可能性があったとは言えない。

2 判旨

 以下の理由により、C社に対し、自殺による逸失利益を含め約5600万円の支払い、B1・B2に対し、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いが命じられました。
・ B1・B2から注意・叱責を受け、かつ、C社が、B1・B2の注意・叱責を制止ないし改善を求めず、A1の業務内容や業務分配の見直しを検討しなかったことにより、A1が受けた心理的負荷の程度やこれらの違法行為が密接に関連するものであることも考慮すると全体として大きなものであったと認めるのが相当である。
したがって、C社の不法行為(使用者責任を含む)によるA1の心理的負荷は、社会通念上、客観的に見てうつ病という精神障害を発症させる程度に過重なものであったと評価することができ、またC社の不法行為(使用者責任を含む)とA1の自殺との間には、相当因果関係があると認めるのが相当である。
・ 一方、B1・B2の不法行為については、心理的負荷の程度は相応に大きいものであり、認定基準に当てはめると「中」と評価されるものであるが、それのみでうつ病を発症させる程度に過重なものであったと評価することはできず、したがって、A1の自殺との間に相当因果関係があると認めることもできないし、B1・B2にA1の自殺について予見可能性があったということもできない。
 

3 ポイント

 本件のポイントは、第1審と控訴審で、認められた損害の範囲が異なるところです。控訴審においては、原審で認められた精神的苦痛に対する慰謝料に加え、B1・B2の行為についてC社が制止・改善の指導を行わなかったこと、C社が業務内容の見直しを行わなかったことを総合的に考えると、心理的負荷の程度が全体として高いものになると判断し、会社にはA1が自殺をすることについての予見可能性があると判断しました。
 会社としては、行き過ぎた指導を行っている従業員に対して、これを制止し、改善するように指導するという積極的なパワハラ予防・対応策が求められていることを示唆しています。

 

 

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