企業法務トピックス
2019/10/09 企業法務トピックス
種類株式の活用
1 種類株式の意義
株式は、会社経営に関する側面(議決権行使)と利益の配当を受ける側面とがあり、株主間では平等に取り扱われるのが原則です(株主平等原則、会社法109条)。
しかし、株式会社の構成員である株主にも、多様な経済的または会社支配に関するニーズがあり得るため、会社法では、株主平等原則の例外として、一定の事項について権利内容等の異なる株式の発行が認められています。
中小企業においては、資金調達目的よりも経営者が柔軟な会社経営を行うことができるようにする目的で活用されることが一般的です。
2 種類株式の内容と活用場面
会社法上、9つの事項での権利内容等の異なる株式発行が認められており(108条1項各号)、大きく分けて8つの種類株式が存在します。
⑴ 優先株式/劣後株式(1号、2号)
剰余金の配当や、残余財産の分配について異なる定めをした種類株式です。優先的に配当等を受けるとしたもの(優先株式)や他の株式に遅れてしか配当等を受けられないとしたもの(劣後株式)があります(標準となる株式は「普通株式」といいます。)。
⑵ 議決権制限株式(3号)
株主総会において議決権を行使することができる「事項」について異なる定めをした種類株式です。定款で議決権行使をできる事項等を定めます。一定の事項についてのみ議決権を有するもののほか、一切の事項の議決権を有しないもの(完全無議決権株式)も含まれます。
中小企業での相続・事業承継の事前準備に活用されることもあります。例えば、後継者以外の相続人に対しては無議決権株式を取得させる方法や、後継者に拒否権付株式を取得させる方法等で、スムーズな事業承継を図る方法は比較的よく見かけます。
また、共同経営者や合弁会社のパートナー間で、資本を多く出資する者と、主に会社経営を任せられている者との間で、資本の数と異なる議決権比率を定めて支配件分配を行うような場合にも、一定の事項について議決権制限株式を活用することもあります。
⑶ 譲渡制限株式(4号)
譲渡による株式の取得について会社の承認を要する種類株式です。
⑷ 取得請求権付株式(5号)
株主が会社に対してその取得を請求することができる種類株式です。
会社による買取りを保証することで、株主にとって将来の制約なく会社に出資できるというメリットがあるため、会社は資金調達を容易に行えるようになります。
あらかじめ定款で、①株主が会社に取得することを請求できること、②取得するのと引き換えに交付する対価の内容や数額または算定方法、③取得請求ができる期間を定めておく必要があります(108条2項5号、107条2項2号、施行規則20条)。
⑸ 取得条項付株式(6号)
会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができる種類株式です。
あらかじめ定款で、①一定の事由が生じた日に会社がその株式を取得する旨及びその事由、②その株式の一部を取得するときはその旨及び取得する株式の一部の決定方法、③取得と引き換えに株主に対して交付する対価の内容・数額または算定方法を定めておく必要があります(108条2項6号、107条3項、施行規則20条1項5号)。
一定の事由が生じた日を会社が定める場合は、取締役会や株主総会決議で決めることになります(168条1項)。
取得と引き換えに交付する対価は、他の株式にすることが可能です。そこで、現経営者が後継者をまだ決めかねている時点で、相続対策として相続人に対して株式譲渡を行う場合に、議決権制限と取得条項を付けた株式を相続人AとBに譲渡し、将来的にAを後継者とすることになった場合に、Aの株式を普通株式に変換する(Bは議決権制限株式のまま)という方法も取られます。
⑹ 全部取得条項付種類株式(7号)
会社が株主総会の特別決議によって当該種類株式全部を取得することができる種類株式です。
あらかじめ定款で、①取得対価の価額の決定方法、②取得に関する株主総会決議をすることができるか否かについての条件を定める場合は、その条件を定めておく必要があります(108条2項7号、3項、施行規則20条1項7号)。
債務超過の会社の再建の手続きの一環として、取得する対価を無償として取得し、償却する(100%減資)手法として利用されることがあります。
また、敵対的企業買収の防衛策のために、取得条項付株式や、全部取得条項付種類株式を利用して買収者の株式を議決権制限株式にする等の方法が考えられます。
そのほか、完全子会社化する場合にも利用されます。
⑺ 拒否権付種類株式(8号)
株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、この種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする種類株式で、いわゆる「黄金株」と呼ばれる株式です。
代表取締役の選任や、株式の発行、重要財産の譲り受け、組織再編等の会社の重要な意思決定について、拒否権を有することができることが最大のメリットです。
あらかじめ定款で、①拒否権付種類株式の株主総会決議があることを必要とする事項、②条件を定める場合はその条件を定めておく必要があります。
⑻ 役員選任権付種類株式(9号)
この種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することができる種類株式です。非公開会社において発行することができます(108条1項但書)。
中小企業においては、創業者が引退後にも会社に影響力を持っておきたい場合等、少数株主が経営に関与し、影響力を持ち利益を図るために利用されることがあります。
3 まとめ
種類株式を活用することで、事前の相続・事業承継対策や、柔軟な資金調達を行うことができます。当事務所では、税理士や公認会計士と連携しながら、事業承継対策等のアドバイスを行うことができますので、種類株式のご活用をお考えの場合には弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください。
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