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2020/06/29   新法・法改正・判例紹介トピックス   法改正  

定型約款

1 定型約款

(1)改正の趣旨

預金、保険、クレジットカード、交通機関、通信、電気・ガスその他大量の同種取引を迅速・効率的に行う等の目的で、契約の一方当事者が定型的な契約条項(いわゆる「約款」)を準備し、これを取引の内容として利用する事例は多数存在します。
しかし、民法には、これまで約款に関する定めはありませんでした。また、民法の原則からすれば、契約当事者が契約内容を認識しているからこそ、契約に拘束されるということになります。これに対し、約款を用いた契約の場合には、当事者が約款の詳細までは把握していないことが一般的であるところ、当事者が契約内容を把握していない場合でも契約の拘束力が及ぶ理由や、その法的根拠については、確立した解釈もなく、法的に不安定な状況でした。
そこで、改正法では、いわゆる約款のうち一定の要件に該当する約款を定型約款と定義づけ、新たに規律を設けることで、定型約款を用いた契約の法律関係について明確化が図られています。

(2)定型約款とは

改正法が適用される定型約款は、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」であり、ここにいう「定型取引」とは、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」とされています(改正民法548条の2第1項)。
取引で用いられている定型的な契約条項(いわゆる約款)がすべて定型約款となるものではありません。定型約款に該当するかどうかは、取引の相手方が特定されているか不特定多数か、交渉による契約内容の個別修正が予定されているか否か等の取引の実態をみて個別に判断することになります。
例えば、銀行の預金取引約款、各種保険約款、クレジットカードの会員規約、バス・鉄道・タクシー等の運送約款、ホテルの宿泊約款、ECサイトの利用規約等、事業者と消費者との間の取引に用いられるものは、上記の要件を充足し、定型約款に該当するとされることが多いと思われます。

2 定型約款が契約の内容となるための要件

(1)要件

改正法では、次の場合には、定型約款の内容を相手方が認識していなくても、定型約款の個別の内容について合意したものとみなされます(改正民法548条の2第1項)。

 

① 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
② 定型約款を準備した者(定型約款準備者)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

 

定型約款を契約の内容とする旨を相手方に「表示」することが必要であり、単にその旨を「公表」するだけでは足りない点に注意が必要です。なお、電車やバスの運送約款のように相手方への「表示」が困難な取引類型のものについては個別の業法に「公表」でも足りる旨の定めが新設されています(例:道路運送法第87条、鉄道営業法第18条の2等)。
また、定型約款準備者は、既に相手方に対して定型約款を記載した書面や電磁的記録を提供していた場合を除き、相手方から定型取引を行う旨の合意の前又は合意後相当期間内に定型約款の開示請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法で定型約款の内容を示さなければなりません(改正民法548条の3第1項)。定型約款準備者が定型取引を行う合意の前に相手方から開示請求を受けたにもかかわらずこれを拒んだ場合には、その原因が一時的な通信障害等の正当な理由がある場合を除き、定型約款の条項の内容は契約内容となりません(改正民法548条の3第2項)。 

(2)不当条項規制

定型約款の内容は、(1)①及び②の要件を満たす場合には原則として契約内容となります。しかし、例外として、定型約款の条項中、相手方の権利を制限し、又は義務を加重する条項であって、取引の特質等に照らして、信義則(民法1条第2項)に違反し、相手方の利益を一方的に害する条項については、契約内容にはなりません(改正民法548条の2第2項)。なお、この場合に契約内容から除外されるのは上記要件に該当する不当な条項のみであり、他の条項は契約内容を構成します。
こうした不当な条項の規制は、消費者の利益を一方的に害する条項の無効を定める消費者契約法第10条と同様の枠組みであり、その適用範囲(排除される不当条項の範囲)も重なり合う部分が多いと考えられています。

3 定型約款の変更

(1)変更の必要性

定型約款を用いた取引かどうかにかかわらず、長期にわたって継続する取引においては、法令の変更や経済情勢・環境の変化に応じ、その内容を変更する必要が生じます。
この場合、民法の原則からすれば、契約内容の変更には相手方当事者の同意が必要となります。しかし、定型約款を用いた取引の場合、取引の相手方が多数に及ぶため、個別の同意を得ることは極めて困難です。
そこで改正法では、一定の要件の下で定型約款準備者による一方的変更により、契約内容を変更することができる旨の規定が新設されました。

(2)変更の要件

改正法では、次のいずれかに該当する場合、定型約款準備者が一方的に定型約款の変更をすることにより、相手方との契約の内容を変更することができるとされています(改正民法548条の4第1項)。

 

① 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
② 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

 

このうち、②は定型約款の変更の必要性及び合理性がある場合に契約内容の変更を認めるというものですが、定型約款にあらかじめ変更があり得る旨の記載があるというのは合理性を支える一つの事情となります。また、変更によって相手方に与える不利益の内容や程度、不利益の軽減措置の有無等も合理性を検討する上で重要な要素となってきます。

(3)変更の方法

定型約款準備者は、定型約款の変更をするときは、変更の時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びに変更時期をインターネットの利用等の適切な方法により周知しなければなりません(改正民法548条の4第2項)。
上記(2)①による定型約款の変更は相手方に不利益を及ぼすものではないため、こうした事前の適切な周知を怠った場合でも効果が生じます。
しかし、②による定型約款の変更は、事前の適切な周知を怠った場合には無効とされており注意が必要です(改正民法548条の4第3項)。

4 経過措置

これらの定型約款の規定は、改正民法で新設されたものですが、定型約款の要件に該当する契約であれば、施行日前に締結されたものについても適用されます。

 

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