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2021/10/21   新法・法改正・判例紹介トピックス   法改正  

所有者不明財産管理制度等

本記事は、2021年4月28日に公布された民法等の改正に関するものです。施行日は公布日から2年以内とされていますが、2021年10月12日現在未定であり、本制度の詳細を定める政令も制定されていません。

1 所有者不明土地・建物の管理制度の新設経緯

現行民法では、特定の者が所有する財産全体の管理制度(不在者財産管理制度)はありますが、個々の不動産を単位とする財産管理制度はありません。そのため、行方不明者の名義となっている不動産について、何らかの理由から管理を求めたいという場合(例えば、隣地を売却するために境界の確定が必要となる場合)には、当該不動産だけでなく、その者の他の財産も管理の対象としなければならず、不必要な手間やコストが生じていると指摘されていました。

こうした指摘を踏まえ、今回、民法が改正され、所有者不明の個々の土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度が新設されました。これにより、不動産単位での対応が可能となり、不在者財産管理人制度よりも迅速かつ低額で財産管理を求めることができ、所有者不明の不動産の管理が効率化・合理化すると見込まれます。また、所有者不明土地・建物の管理人(以下「管理人」といいます。)は、裁判所の許可を得て、所有者不明の不動産の売却することもできるため、所有者不明の不動産に関する問題解決が促進されることが期待されています。

2 管理人選任申立の要件

(1)所有者の不明または所在不明

    管理人は、「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」不動産がある場合に裁判所に選任を請求することができます(改正後民法264条の2第1項、264条の8第1項)。

    どのような状況であれば、「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」と認められるかについて、定義規定は設けられていませんが、名義人が個人の場合には、不動産登記から住民票を辿ることが必要であり、これにより登記名義人が死亡していることが判明したときは、戸籍からその相続人の有無を調査することが必要になるとされています。また、法人の場合には、本店所在地が不明であり、その代表者についても所在が不明であることが必要とされています。

    また、不動産が共有されており、その共有者の全部又は一部が不明・所在不明という場合には、当該共有者の有する共有持分を対象として、管理人の選任を求めることができます。

    なお、マンションのような区分所有建物については、建物の区分所有等に関する法律の活用により、所在不明となった区分所有者に対する一応の対応が可能であることから、今回の民法改正による所有者不明建物管理人制度の適用はありません。

 

(2)必要性

   管理人は、裁判所が必要であると認めた場合に選任されます。

   申立人は所有者不明土地・建物について管理の必要性があるからこそ、管理人の選任を請求するのであり、管理人選任の必要性がないというケースは稀と思われますが、例えば、所有者の所在は不明であるが、第三者が適法な権限に基づき当該不動産を管理している場合には、必要性の要件を満たさない場合があるとされています。

 

(3)申立権者

   所有者不明土地・建物の利害関係人が管理人の選任を申し立てることができます。

   利害関係人としては、その不動産が適切に管理されないために不利益を被るおそれがある隣接地所有者や、一部の共有者が不明な場合の他の共有者、その不動産について時効取得を主張する者、その不動産を取得してより適切な管理をしようとする公共事業の実施者等が挙げられています。民間の買受希望者については、一律に排除されるものではないとされてはいますが、利害関係人として認められるかは個別具体的な事情を総合勘案して判断されることになると思われます。

3 管理人選任の効果

(1)管理人の権限

   管理人は、その対象となった不動産について専属的な管理処分権を有するとされています(改正後民法264条の3第1項、264条の8第5項)。

   管理人の権限は、当該不動産だけでなく、同所にある所有者不明土地・建物所有者が所有する動産、敷地利用権、当該不動産及び動産の管理、処分その他の事由により管理人が得た財産に及びます(改正後民法264条の3第1項、264条の8第2項)。

   管理人は、保存行為及び当該不動産の性質を変えない範囲内での利用・改良行為を行うことができ、裁判所の許可を得た場合には、これを超える行為をすることもできます(改正後民法264条の3第2項、264条の8第5項)。裁判所の許可を得た上で行うことが想定される行為の代表例は、不動産の売却です。建物については、所有者不明建物について管理人が選任された場合に、管理対象である建物を取り壊すことは原則として許されないと考えられていますが、建物を維持した上で管理を継続することが困難なケースで、所有者が出現する可能性などを踏まえても、建物を取り壊したとしても所有者に不利益を与えるおそれがないときには、裁判所の許可を得た上で管理人が取り壊すことも可能であるとされています。

 

(2)管理人の義務

   管理人は、所有者不明土地・建物の所有者のために善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならないとされています(改正後民法264条の5第1項、264条の8第5項)。

   また、不動産が共有されており、その共有者の全部又は一部が不明・所在不明という場合には、当該共有持分を有する複数の共有持分権者のために管理人が選任された場合には、管理人は、対象となった共有持分権者全員のために誠実・公平に権限を行使しなければなりません(改正後民法264条の5第2項、264条の8第5項)。

以 上

 

 

 

本記事は、2021年4月28日に公布された民法等の改正に関するものです。施行日は公布日から2年以内とされていますが、2021年10月12日現在未定であり、本制度の詳細を定める政令も制定されていません。

1 所有者不明土地・建物の管理制度の新設経緯

現行民法では、特定の者が所有する財産全体の管理制度(不在者財産管理制度)はありますが、個々の不動産を単位とする財産管理制度はありません。そのため、行方不明者の名義となっている不動産について、何らかの理由から管理を求めたいという場合(例えば、隣地を売却するために境界の確定が必要となる場合)には、当該不動産だけでなく、その者の他の財産も管理の対象としなければならず、不必要な手間やコストが生じていると指摘されていました。

こうした指摘を踏まえ、今回、民法が改正され、所有者不明の個々の土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度が新設されました。これにより、不動産単位での対応が可能となり、不在者財産管理人制度よりも迅速かつ低額で財産管理を求めることができ、所有者不明の不動産の管理が効率化・合理化すると見込まれます。また、所有者不明土地・建物の管理人(以下「管理人」といいます。)は、裁判所の許可を得て、所有者不明の不動産の売却することもできるため、所有者不明の不動産に関する問題解決が促進されることが期待されています。

2 管理人選任申立の要件

(1)所有者の不明または所在不明

    管理人は、「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」不動産がある場合に裁判所に選任を請求することができます(改正後民法264条の2第1項、264条の8第1項)。

    どのような状況であれば、「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」と認められるかについて、定義規定は設けられていませんが、名義人が個人の場合には、不動産登記から住民票を辿ることが必要であり、これにより登記名義人が死亡していることが判明したときは、戸籍からその相続人の有無を調査することが必要になるとされています。また、法人の場合には、本店所在地が不明であり、その代表者についても所在が不明であることが必要とされています。

    また、不動産が共有されており、その共有者の全部又は一部が不明・所在不明という場合には、当該共有者の有する共有持分を対象として、管理人の選任を求めることができます。

    なお、マンションのような区分所有建物については、建物の区分所有等に関する法律の活用により、所在不明となった区分所有者に対する一応の対応が可能であることから、今回の民法改正による所有者不明建物管理人制度の適用はありません。

 

(2)必要性

   管理人は、裁判所が必要であると認めた場合に選任されます。

   申立人は所有者不明土地・建物について管理の必要性があるからこそ、管理人の選任を請求するのであり、管理人選任の必要性がないというケースは稀と思われますが、例えば、所有者の所在は不明であるが、第三者が適法な権限に基づき当該不動産を管理している場合には、必要性の要件を満たさない場合があるとされています。

 

(3)申立権者

   所有者不明土地・建物の利害関係人が管理人の選任を申し立てることができます。

   利害関係人としては、その不動産が適切に管理されないために不利益を被るおそれがある隣接地所有者や、一部の共有者が不明な場合の他の共有者、その不動産について時効取得を主張する者、その不動産を取得してより適切な管理をしようとする公共事業の実施者等が挙げられています。民間の買受希望者については、一律に排除されるものではないとされてはいますが、利害関係人として認められるかは個別具体的な事情を総合勘案して判断されることになると思われます。

3 管理人選任の効果

(1)管理人の権限

   管理人は、その対象となった不動産について専属的な管理処分権を有するとされています(改正後民法264条の3第1項、264条の8第5項)。

   管理人の権限は、当該不動産だけでなく、同所にある所有者不明土地・建物所有者が所有する動産、敷地利用権、当該不動産及び動産の管理、処分その他の事由により管理人が得た財産に及びます(改正後民法264条の3第1項、264条の8第2項)。

   管理人は、保存行為及び当該不動産の性質を変えない範囲内での利用・改良行為を行うことができ、裁判所の許可を得た場合には、これを超える行為をすることもできます(改正後民法264条の3第2項、264条の8第5項)。裁判所の許可を得た上で行うことが想定される行為の代表例は、不動産の売却です。建物については、所有者不明建物について管理人が選任された場合に、管理対象である建物を取り壊すことは原則として許されないと考えられていますが、建物を維持した上で管理を継続することが困難なケースで、所有者が出現する可能性などを踏まえても、建物を取り壊したとしても所有者に不利益を与えるおそれがないときには、裁判所の許可を得た上で管理人が取り壊すことも可能であるとされています。

 

(2)管理人の義務

   管理人は、所有者不明土地・建物の所有者のために善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならないとされています(改正後民法264条の5第1項、264条の8第5項)。

   また、不動産が共有されており、その共有者の全部又は一部が不明・所在不明という場合には、当該共有持分を有する複数の共有持分権者のために管理人が選任された場合には、管理人は、対象となった共有持分権者全員のために誠実・公平に権限を行使しなければなりません(改正後民法264条の5第2項、264条の8第5項)。

以 上

 

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