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トピックス

2021/10/21   新法・法改正・判例紹介トピックス   法改正  

管理不全不動産管理制度等

1 問題の全体像

 管理不全土地や管理不全建物の問題にはどのようなものがあるでしょうか。

 今回の法改正では、「法的管理」の問題点である「所有者不明土地」と、「物理的管理」の問題点である「管理放棄地」の問題への対応が検討されました。

 管理放棄地の問題とは、例えば、中山間地域における林地や農地の所有者が管理放棄をした「耕作放棄地」や、居住用不動産を相続等で承継しながらも現に管理ができていないことによって他人の権利等を侵害してしまう「空き地・空家問題」があります(管理放置型)。また、実際に居住・利用しながらも管理が不適切なため他人の権利等を侵害してしまう、いわゆる「ゴミ屋敷」問題もあります(不適切管理型)。

 特に、不適切管理型の場合は、現に利用・管理がされていることから、法的な介入が難しい問題でした。

 

2 管理不全不動産管理制度の新設経緯

 不動産を誰も管理していない場合や、適切な管理がなされていない場合等、「管理不全土地」や「管理不全建物」が放置されていることで権利を侵害される人は、現行民法上でも、侵害される権利(例えば隣接地の所有権や人格権)を根拠とした、妨害排除請求(是正措置の請求)を行うことができます。しかし、継続的な管理が必要となるときや、どのような是正措置を求めるかあらかじめ確定することが困難なとき等、訴訟による権利行使では対応が困難な場合があることが指摘されていました。

 そこで、改正法では、所有者による不動産の管理が不適当であることによって、権利利益の侵害又はそのおそれがある場合、必要があると認められるときは、利害関係人の請求によって、管理不全不動産について、裁判所が管理不全土地管理人や管理不全建物管理人による管理を命ずる処分をすることができる制度が創設されました。

 

3 管理人選任申立の要件

(1)管理が不適当であること

  管理が不適当な場合は、管理放置型だけでなく、管理する者はいるもののその管理が適切ではない不適切管理型も含みます。どのような場合に「不適当」と判断されるかは、①所有者の使用形態や②所有者の意思が重要な考慮要素とされます。

  所有者の使用形態については、所有者が土地に居住している等、実際に使用している場合は管理者に管理させることが適切ではないケースが多いでしょう。もっとも、使用しているといっても、放置しているのと大差ないような場合は、「不適当」と判断される場合もあります。

  所有者の意思は重要な要素とされており、実際に裁判所が管理命令の裁判をする際には、一般に、所有者の陳述を聞くこととされています。

 

(2)権利侵害又はそのおそれ

  管理人による管理は、所有者の財産管理に介入する側面があるため、権利侵害やそのおそれがある場合でなければなりません。具体的には、がけ崩れや土砂の流出、竹木の倒壊等が生じ、又はそのおそれがある場合等です。

 

(3)因果関係

  上記の権利侵害又はそのおそれがあることと、管理が不適当であることとの間には因果関係が必要です。この点では、「生じる」ことではなく「ある」とされているところが一つのポイントです。

  例えば、台風等の自然災害で倒木が生じた場合に、不可抗力で隣地所有者への侵害が生じたとしても、その後に適切な管理を行わない場合もこの制度の対象となります。

 

(4)管理人選任の必要性

  管理命令が出されるのは、裁判所が「必要があると認める」場合に限られます。権利侵害がある場合でも、侵害の程度が低い場合等は必要性がないと判断される可能性があります。

 

(5)申立てができる者(利害関係人)

  この制度は「利害関係人」が裁判所に申立てます。例えば、管理が不適当であることで権利が侵害されている又はされる恐れがある者等です。

 

4 管理人選任の効果

(1)管理人の権限

 管理不全土地管理人や管理不全建物管理人は、命令の対象とされた不動産の管理処分権を有します(この場合、元の所有者の管理処分権が否定されるわけではありません。)。対象不動産の管理について所有者による管理妨害がされる場合には、管理人が所有者に対して管理妨害の排除請求をすることになります。

  管理人は、裁判所の許可を得ずに、①保存行為や、②対象不動産の性質を変えない範囲での利用・改良行為を行うことができます。また、これらを超える行為について(例えば、不動産の処分や建物の解体等)は、裁判所の許可を得て行うことができます。なお、不動産の処分や建物の解体についての裁判所の許可は、所有者の同意がある場合に限りすることができるとされています。

 

(2)管理人の義務

  管理人は、善良な管理者の注意をもってその権限を行使する義務を負います。善良な管理者の注意をもって所有者の「利益を害さないように」という意味であり、所有者の「意向に沿うように」という意味ではないと整理されています。

  また、対象不動産が数人の共有に属する場合は、共有持ち分を有する者全員のために、誠実かつ公平に権限を行使する義務を負います。

 

5 さいごに

 特に不適切管理型の場合には、土地の所有者(管理者)と近隣住民との関係が従前から悪化している場合も多く、従前の制度では執行手続きに至るまで、解決が特に難しかったといえるでしょう。

今回の法改正により、「権利侵害又はそのおそれ」があり、「裁判所が必要」と認めれば、管理人が選任され、適切な管理が実施されることとなります。

 申立人側としては、これまでの是正措置を求める訴訟のように、どのような権利侵害があるのか、その程度はどのようなものか、きちんと資料を添えて裁判所に申し立てを行う必要がありますので、制度利用の可能性についても、一度弁護士にご相談されると良いでしょう。

以 上

 

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