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2019/10/18   企業法務トピックス  

株主総会の簡略化


1. 株主総会の決議・報告の省略

株主総会は、原則として事前に定めた日時・場所で会議を行い決議事項については決議を、報告事項については報告を行うことが予定されています。
しかし、例外的に議決権を行使することができる株主全員が取締役又は株主の提案に賛成しているときには、その提案を可決した株主総会があったとみなして、決議について総会の開催自体を省略することができます(法319条)。これは、実際の決議(会議の場での議決)がなされていなくてもあったものとみなすというものであり、「書面決議」と呼ばれたりもしますが、正確には「決議の省略」ということになります。
この趣旨は、株主の全員が株主総会の目的事項についての提案に対し、書面又は電磁的記録で同意している場合には、わざわざ総会を現に開いての議決をする必要性がないため、全員が同意しているということをもって株主総会の目的事項について決議があったもの評価するというものです。
同様に、取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合に、その事項を株主総会で報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意したときは、株主総会への報告があったものとみなして、株主総会の開催自体を省略することができます(法320条)。
なお、決議の省略をする事項以外の決議事項や報告事項があり、それらについて決議の省略(法319条)、報告の省略(法320条)の対象としない場合は、別途、会議としての株主総会を開催する必要があります。

2. 決議・報告の省略に関する具体的な手続

(1)まず、会社から株主総会の目的事項について提案をする場合には、取締役(代表取締役が提案するのが一般的です。)が株主の全員に対し、提案をする必要があります。
この提案は、株主総会の招集決定と同様に重要な業務執行に該当すると考えられますので、取締役会決議(取締役会を設置していない会社は取締役による決定)が必要となります(法298条4項)。取締役会決議をうっかりと失念してしまうと株主総会の決議取消事由になってしまうので注意が必要です。
なお、株主から提案があった場合には取締役会の決議は必要ありません。取締役会の決議は、あくまで、会社から提案を行うことが重要な業務執行に該当するために必要となるものだからです。株主が株主総会の決議の省略を提案するというのは、稀有な例だと思われますが、例えば、株主がごく少数の会社において、全株主の連名で提案がなされ、それについて全員から書面又は電磁的記録で同意の意思表示がなされれば、それで決議があったものと扱うことになります。
なお、この提案は、会社法には方式の定めがありませんので口頭でも可能です。とはいえ、提案があったことが株主総会の省略の要件となるため、提案の有無で争いが生じないように提案書という形で書面化するのが適切です。また、株主への情報提供が不十分で株主として同意すべきかどうか判断できないときは提案に同意してもらえないでしょうから、提案書には株主が内容を理解して同意できる程度に提案の概要等も記載しておくことが望ましいでしょう。

 

(2)次に、提案書を株主に提供し、株主から同意書を取り付けることになります。会社法上、書面又は電磁的記録となっているため、電子メールに添付ファイルを付す方法でも同意書面を取り付けることはできますが、その場合、電子署名等が手間となるため、実際に書面で行うことが多いと思われます。
書面で同意書を取付ける場合には、1枚の書面の下部に「同意書」部分を作り、そこに記名押印等をしてもらう「提案書兼同意書」という形にすることもできますし、別途、同意書面を取り付けるという形にすることもできます。
上記の同意書として、「議決権行使書」を用いているケースも見受けられますが、議決権行使書は、一般に、株主多数の会社で書面投票をする場合の議決権行使書面を指すところ(法301条1項)、株主総会の決議の省略の場面では議決権の行使そのものを観念することができませんので、提案書とそれに対する同意書という形式が相当です。

 

(3)決議があったとみなされるのは、「全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき」とされていますが、これは、具体的には、全ての同意書面が提案者の手元に届いたときを指します。全ての同意書が提案者の手元に届いた時点で、会議の目的事項について決議されたのと同じ効力が生じます。したがって、決議の内容が役員選任であれば選任の効力が、定款変更であれば定款変更の効力がそれぞれ生じます。

 

(4)株主総会への報告の省略に関する手続は、概ね、上記(1)から(3)と同様です。具体的には、株主に報告事項を通知し、株主総会での報告の省略に関して株主全員から書面又は電磁的記録による同意を得ることで、株主総会で当該事項の報告がなされたものとみなされます。
 

3. 議事録の内容

(1)役員の選解任決議のように後に登記が必要となるような決議の場合には、登記手続の際に決議があったことを証する書面が必要となります。また、総会の記録管理の観点からは特定の決議が会議の開催でなされたのか、総株主の同意でなされたのかは明確にしておくことが望ましいといえます。そこで、株主総会の決議の省略の場合も株主総会議事録の作成が義務付けられています(法319条2項)。

 

(2)決議の省略に伴う議事録は、①株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容、②当該事項の提案をした者の氏名又は名称、③株主総会の決議があったものとみなされた日、④議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載することになります(規則72条4項1号)。なお、株主からの提案の場合には、②の提案者として当該提案をした株主の氏名又は名称を記載することになります。

 

(3)報告の省略に伴う議事録は、①株主総会への報告があったものとみなされた事項の内容、②株主総会への報告があったものとみなされた日、③議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載することになります(規則72条4項2号)。

4. 制度の活用

株主総会の決議について、あらかじめ株主の全員が賛同しているとわかっていながら株主総会を開くことは、参加者にとって負担であり、関係者の拘束時間を勘案した開催コストは相当な経済的な損失といえます。そのため、株主総会の決議・報告の省略は、株主総会で決議する事項についてあらかじめ株主全員の賛同が得られると分かっている場合や、M&Aの意思決定など決議に迅速な対応が求められる場合などで、時間や手間を省くことができる制度として活用されています。
株主総会の決議・報告の省略は、株主数の少ない中小企業では活用し易い制度だと思われます。中小企業では、実際には、株主総会を開催していない企業も多いとは思いますが、会社法上は定期的な株主総会の開催が必要となります。手間や労力は節約しつつも会社法に則った経営をするという観点から、株主総会の決議・報告の省略をご検討されてはいかがでしょうか。導入をご検討の場合には、弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。

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