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トピックス

2021/01/20   判例紹介   新法・法改正・判例紹介トピックス  

持続化給付金の差押禁止

*)本記事は、2021年1月15日時点の情報に基づいて作成されています。

 

金銭債権の債務者(= 何らかの理由でお金を支払わなければならない人)が任意での支払いに応じてくれない場合、債権者(= 支払いを受ける人)は、強制執行による回収を検討することになります。

その手段の1つとして、債務者が第三者に対して有する債権を差し押さえる手続があります。これを債権執行といい、例えば、預貯金や給与の差押えがあります。

今回は、持続化給付金の差押えに関する裁判例をご紹介します。

 

  1. 1.強制執行制度の概要

 まず、今回の裁判例の内容を理解するため、強制執行制度の概要をみてみましょう。

(裁判例の内容のみご覧になりたい方はこちらへ)

 

1)権利の判定と強制執行手続の峻別

強制執行は、裁判所が債権者の権利を強制的に実現する制度です。そのため、債権者の権利が本当に存在しているかどうか、権利の内容等については、慎重に判断される必要があります。他方、債権者の権利が確定した後は、その実現のための強制執行手続は、迅速に行われる必要があります。

そこで、我が国では、債権者の権利を確定する手続と、強制執行手続が分離され、執行機関は、債権者の権利の存否・内容等を判断しなくてよいこととする制度がとられています。

 

2)強制執行の要件

ア.申立ての要件

強制執行の申立てには、執行文の付された債務名義(民事執行法第25条本文)と執行文(同法第26条)が必要です。

 

債務名義とは、債権者の給付請求権の存在と範囲を公証する文書をいいます。

債務名義の例には、以下のようなものがあります。

 ・確定判決(民事執行法第22条1号)

 ・仮執行宣言付判決(同2号)

 ・抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(同3号)

  *)確定しなければ効力を生じない裁判の場合は、確定したもの

 ・仮執行宣言付損害賠償命令(同3号の2)

 ・仮執行宣言付支払督促(同4号)

 ・訴訟費用、和解費用負担額を定める裁判所書記官の処分

  執行費用、返還すべき金銭の額(民事執行法第42条4項)

  を定める裁判所書記官の処分(同4号の2)

 ・執行証書(同5号)

 ・確定した執行判決のある外国裁判所の判決(同6号)

 ・確定した執行決定のある仲裁判断(同6号の2)

 ・確定判決と同一の効力を有するもの(同7号)

  ‐裁判上の和解における和解調書(民事訴訟法第267条)

  ‐認諾調書(同条)

  ‐民事調停における調停調書(民事調停法第16条)

  ‐家事調停における調停調書(家事事件手続法第75条、第268条1項)

  ‐調停に代わる裁判(民事調停法第17条、18条3項、家事事件手続法第284条1項、3項、第281条、

   第287条)

  ‐破産手続における、破産債権者表(破産法第221条)

 

執行文とは、債権者がその債務名義によって強制執行をすることができることを示すものです(民事執行法第26条)。

特に、債務名義上の権利に一定の条件(例:債権者の先履行、解除権留保、不確定期限)が付いている場合や、債務者が死亡して相続が発生している場合等に注意が必要です。

 

イ.手続開始の要件

強制執行の開始には、債務名義が債務者に送達されていること(民事執行法第29条前段、同規則第20条)が必要です。

また、執行機関において容易に判断できる条件(例:引換給付、確定期限)が付いている場合、執行機関がその成就を判断し、手続を開始します。

 

3)差押禁止債権

 

ア.債務者が差し押さえを受けてその生活が立ち行かなくなることを防ぐため、原則として、給与、退職金、ボーナス、仕送り等を受ける債権のうち、4分の3に相当する額は、差し押さえることができません(民事執行法第152条1項、2項)。債務者の給与等が高額な場合等、4分の3に相当する額が33万円を超える場合、差し押さえることができない金額は33万円にとどまります(民事執行法施行令第2条)。

預貯金債権については、差押禁止規定はありませんので、給与やボーナスが振り込まれた後に預貯金を差し押さえることは可能です。

令和2年の新型コロナウイルス特別定額給付金のように、個別法で、差し押さえができないものとされている債権もあります(令和二年度特別定額給付金等に係る差押禁止等に関する法律)。

また、法律上または性質上譲渡できない債権も、差し押さえできないものと考えられています。

 

イ.個別具体的な案件における差し押さえの妥当性を図るため、債権者・債務者の生活状況その他の事情を考慮して、ⅰ)差押命令に対し、債務者の申立てによって、その全部または一部を取り消して差押禁止の範囲を拡張したり、ⅱ)債権者の申立てによって、差押禁止債権の部分も差し押さえたりすることができます(民事執行法第153条)。これを、差押禁止債権の範囲の変更といいます。

 

  1. 2.神戸地裁伊丹支部令和2年11月19日決定

    1)事案の概要

債務者Aは飲食店を営む個人事業主であり、債権者Bは消費者金融です。

BがA名義の貯金債権を差し押さえたところ、Aは、「貯金のうち100万円は個人事業主への持続化給付金であり、Aが現実に確保する必要がある」として、差押禁止債権の範囲の変更による差押命令の取り消しを求めました。

A名義の貯金口座には、令和2年9月1日時点で499円の残高があり、9月2日に持続化給付金として100万円が振り込まれて残高が100万499円になりましたが、同日、この100万499円全額が差し押さえられました。

 

2)裁判所の判断

裁判所の判断は、大要以下のとおりです。

(詳細は、原文をご確認ください)。

 

ア.結論

 差し押さえられた100万499円のうち、持続化給付金として支給された100万円については、差押えを取り消す。

 

イ.判断の理由

 

ア)差押禁止債権の範囲について

 まず、裁判所は、「持続化給付金の支給を受ける権利については、現時点において、これを差押禁止債権とする法律の規定は存在しない」と認めました。

もっとも、差押禁止債権とする法律がない場合でも、譲渡性がない債権他人が代わって行使することのできない債権については、その性質上、差し押さえることができないとしました。

そのうえで、持続化給付金の制度の目的が

「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うインバウンドの急減や営業自粛等により、特に大きな影響を受けている中小企業等及び個人事業者等に対して、事業の継続を支え、再起の糧とするために事業全般に広く使える給付金を給付すること(持続化給付金給付規程(個人事業者等向け)2条)」

であることに言及し、

「持続化給付金は、給付対象の個人事業者等に現実に確保されなければ、上記目的を実現することは困難であると考えられるから、当該個人事業者等の債権者が、持続化給付金の支給を受ける権利を差し押さえ、当該個人事業者等に代わって支給を受けるということは予定されていないというべき」

として、持続化給付金の支給を受ける権利は、前述の、性質上の差押禁止債権にあたると判断しました。

 

イ)持続化給付金の支給を受けた預貯金の差押えについて

ところで、持続化給付金の支給を受ける権利が差押禁止債権であるということは、債権者が債務者の代わりに持続化給付金を受け取ることができないことを意味するにすぎません。本件では、既にAは口座への振込という方法で持続化給付金を支給されており、差押禁止規定のない預貯金債権になっています。

この点について、裁判所は、

「差押禁止債権の範囲変更の申立てにおいて、

①その原資の属性が持続化給付金の支給を受ける権利であることが認められれば、

②他に事業継続を支える財産や手段があること等その取消しを不当とする特段の事情のない限り

当該貯金債権に対する差押命令は取り消されるべきであると解するのが相当である」

としました。

なお、新型コロナウイルス特別定額給付金については、法律上、その支給を受ける権利・支給を受けた金銭いずれについても、差し押さえることができないものとされています(令和二年度特別定額給付金等に係る差押禁止等に関する法律第1条、第2条)。

 

ウ)差し押さえられたAの貯金について

 本件について、裁判所は、貯金残高推移に言及し、差し押さえられた100万499円のうち100万円について、

「令和2年9月2日に持続化給付金として100万円が振り込まれた後、同日に本件差押命令が第三債務者に送達されるまでの間、入出金がないことから、持続化給付金の支給を受ける権利を原資とするものと認められる」

と判断し、Bに、499円の差押えしか認めませんでした。

 

債務者に他に財産がある場合や入出金がある場合、新型コロナウイルス感染症に関する他の給付金が振り込まれた口座の差押え等、本決定の判断がどこまで通用するかは、個別の事情を検討する必要があります。

 

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