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2021/01/27   コロナ関連トピックス   契約関係  

コロナ対応Q&A(労務編)イベント中止時の返金

1 設問

当社の主催するイベントが、新型コロナウイルスの感染拡大により、中止せざるを得なくなってしまいました。約款には、当社の責めに帰することができない事情でイベントが中止になった場合には一切返金しない旨を定めています(以下、「本件条項」といいます。)。参加者から返金を求められても、返金しなくて済むでしょうか。

 

2 回答

(1)消費者契約法10条との関係で本件条項が無効とならないか問題となります。

ア 消費者契約法10条について

 

消費者契約においては、事業者側が大量取引を迅速かつ画一的に処理しながら安定した契約を確保するために、一定の場合に、自己の責任を免除もしくは軽減することにより相手方である消費者の権利を制限し又は相手方である消費者に一定の義務を課す等することがあります。ただ、それが時には情報・交渉力の面で消費者と事業者との間に大きな格差を生じ、消費者の正当な利益を害することもあることから、消費者契約法10条等により事業者側の定めた条項の効力を認めるかどうか調整がなされています。改正民法548条第2項で定型約款の効力が制限されているのも、同様の趣旨によるものです。

①「消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」とは

その条項がなければ、本来消費者が権利行使できたことができないようになるか、又は、負わされることがなかった義務を負わされるという場合、この要件に該当することになります。

②「民法第一条第二項に規定する基本原則に反」するとは

民法1条2項では、「権利の行使及び義務の履行は信義に従い誠実に行わなければならない。」とされています。当該事案における一切の個別事情を考慮したうえで、契約内容が一方当事者に不当に不利であるような場合には、一方当事者の信頼を裏切る誠意ある行動とは言えないとして、基本原則に反すると言われています。

③「消費者の利益を一方的に害する」とは

②の民法上の基本原則を受け、当該条項が両当事者の衡平(均衡・公平)を損なっており、消費者の権利が不当に侵害されていると判断されるような場合に、当該条項が無効とされます。

 

イ 本件条項について

仮に本件条項がなかったとすると、主催者側の責めに帰することができない事由によりイベント等が開催されない場合、民法536条1項に基づき、代金は発生しないのが原則となります。このため、消費者は本件条項がなければ返金を求めることができます。

つまり、本件条項は、契約解除により、消費者が返金を求める権利を行使できたところ、これを制限するものです。本件条項は、消費者契約法10条の「消費者の権利を制限」する消費者契約の条項にあたると考えられます(上述ア①)。

では、「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する」でしょうか(上述のア②及び③)。この点については、個別具体的な事情を考慮する必要があります。予定するイベントが大規模な会場設営や人件費の投入を要するようなものであり、準備段階で主催者側に費用負担が生じるような場合には、返金しないという条項も一概に不当な条項とは言えないでしょう。他方で、オンラインセミナーのように、準備段階における主催者側の費用負担が小さいような場合には、不当な条項とされる可能性も出てきます。

消費者側が負担する代金の金額の多寡や、契約締結時にどの程度当該条項のことが説明されていたかといった事情によっても、判断が分かれる可能性があります。

今後の対策としては、契約締結時に返金できない旨を明示しておくことや、具体的に準備による負担が生じる一定の時期から返金を不可とする旨定めておくなどの工夫も考えられるでしょう。

 

(2)民法上の定型約款に当たる場合、改正民法548条の2第2項で合意がないとみなされないか問題となります。

改正民法では、定型的な大量の取引を行う場合に用いられる約款について、当事者が約款の詳細までは把握していないことが多いことから、一部の約款について、「定型約款」として規制をしています。

どのようなものが定型約款にあたるのか等詳細は以下の記事をご参照ください。

***民法改正の定型約款についての記事のリンク***

基本的には、消費者契約法10条と同様の枠組みであり、消費者契約法10条で無効とされない条項は、民法548条2項上も問題とならないのではないかと考えられます。

 

ウイルスの感染拡大は他の様々な自然災害と同様、見通しを立てるのは容易ではありません。流行期が反復継続することもあり、各社とも対応に苦慮しているかと思いますが、可能な限り損失を抑え経営悪化を防ぐため、条項の定め方も見直してみるとよいのではないかと思います。

 

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