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労働法トピックス

2017/09/05   労働法トピックス   問題社員への対応   就業規則  

協調性・適格性のない社員の解雇を有効とした事例

 

平成29年7月4日、最高裁は、協調性・適格性のない社員の解雇を有効と判断した東京高裁平成28年11月24日判決を支持しました。

 この事案で裁判所が考慮したのは次のような事情です(以下、被解雇者をXとします。)。

 

①Xのきつい言動等

Xは、他の職員らに対してしばしば怒鳴ったりきつい言葉遣いや態度をとったり、叱責するなどしていた。また、無視したり、自分以外の電話を取らなかったりもしていた。

<具体例>

「検品はいつできるのか。いつ修理が出来上がるのか。期日までに完納できなかったらどうするのか。どう責任を取るのか。」「皆の仕事のやり方が遅い。あんたのような仕事ができない人を私は相手にしない。」など。

 

②他の職員への悪影響や軋轢

・①に対し、主として検品部門の職員らが強い不満やストレスを感じていた。

・1人が退職したほか、パート職員で検品部門の責任者であるBは、精神的に追い詰められ、会社の慰留によって退職は思い止まったものの、2回早退をしようとし、2回目は実際に早退した(Bの胃痛等の症状、持病の悪化についてXが原因でないといえない。)。

・その他の職員らもXの言葉遣い等を問題視し、会社代表者に対して繰り返し改善を求めていた。

 

③度重なる指導や警告(口頭による)を行うも改善なし

・平成25年1月、同年3月、翌平成26年6月、7月(2回)と、会社代表者が、言葉遣いを改めるよう注意したほか、怒鳴るのではなくおとなしく話すよう、注意をした。

・「改まらない場合には会社を辞めてもらうことになる」「Xの言葉遣いや態度が改まらない場合には、検品部門との連絡等の仕事を営業部長や会社代表者がいつまでも行わなければならず、会社の業務に支障を来すことから、その場合は会社を辞めてもらうことにならざるを得ない」などと警告した。

・検品部門の職員らが萎縮しないよう、Xによる作業場との連絡調整や立ち入りをしないよう指示したが、しばらくして立ち入るようになり職員らへの言動が再開した。

 

④会社の規模(会社に与える影響の重大性)

・正社員12名、パート12名ほどの小規模な会社

・Xと軋轢を生じている検品部門に半数の職員が在籍。人数的にも業務的にも会社の業務において重要な役割を果たしており、その責任者や他の職員が退職する事態となれば、会社の業務に重大な打撃を与えることになる。

 

裁判所は、これらの事情からみれば、「単に職場の良好な人間関係を損なうという域を超えて、職場環境を著しく悪化させ、会社の業務にも支障を及ぼすものである」として、就業規則40条3号にいう「協調性がなく、注意及び指導をしても改善の見込みがないと認められるとき」に該当するほか、同条5号にいう「会社の社員としての適格性がないと判断されるとき」に該当するとして、解雇に客観的合理的理由があると判断しました。

 

また、この事案は、会社がXから妊娠を告げられた直後の解雇であったため、X側から妊娠を契機として解雇したものであり、妊娠を理由とする解雇だから許されない旨の主張がなされましたが、会社側が上記のとおり、妊娠以外の客観的合理的理由があることの証明に成功したものです。

 

なお、解雇手続きの相当性については、解雇以前にXに対し懲戒処分をしたことはなく、始末書の提出も求めたことはなく、本件解雇を決定する前に(改めて)Xの言い分を聞くこともしていないことが妥当か問題になりました。

しかし、この会社が非常に小規模の会社であり、解雇も懲戒処分も始末書の提出も、過去に例がなかったことから、本件では解雇過程の記録化・証拠化の不十分さは「致し方ない」として手続が不当とはされませんでした。また、Xの言い分を聴取しなかったことについては、再三にわたる話合いの場を設けていたため、改めて聞かなかったからといって不当とは判断されませんでした。

 

協調性や適格性がない場合の解雇については、ほとんどの会社の就業規則に定められていることと思います。しかし、具体的にどのような問題社員が解雇できるのかについては、これまで必ずしも明確ではありませんでした。

本件は、その指標となる重要な判例となると考えられます。

 

 

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