アステル法律事務所 熊本・東京の弁護士法人アステル法律事務所

新規予約専用0120-94-7455
事務所番号 熊本本社
096-352-0001
八代オフィス
0965-39-5368

受付時間/平日9:00〜17:00

topicsトピックス

トピックス

2020/12/25   コロナ関連トピックス   従業員対応  

コロナ対応Q&A(労務編)自宅待機と休業手当の要否

1 設問

以下のように自宅待機させる場合に、休業手当を支払う必要があるでしょうか。

① 発熱が認められる従業員を自宅待機させる場合。

② 味覚障害等の新型コロナウィルス感染症の典型症状が現れている従業員をPCR検査結果がわかるまで自宅待機させる場合。

③ 同居家族の感染が確認された従業員を自宅待機させる場合。

 

2 回答

※事業所自体を休業する場合の、従業員の有給休暇との関係については、こちらの記事(休業と有給休暇)をご参照ください。

 

⑴ 自宅待機と賃金・休業手当

会社からの連絡に出られるような状態で待機させることを義務付ける場合は、自宅で待機すること自体が業務となる(在宅勤務となる)ので通常通りの賃金支払いが必要です。

これに対し、使用者側から出社しないように求めるもの、すなわち、法的な関係から言えば、労働契約に基づく労働者の労務提供を受けることを拒否するものの場合は、その理由によって賃金支払いや休業手当の支給の要否が変わります。

まず、民法の規定上、この労務提供義務の履行を拒絶する場合に、使用者側に帰責事由がある場合(民法536条2項)には、賃金全額の支払いが必要です。

(民法536条)

1 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことはできない。この場合において、債務者は、事故の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

次に労働基準法26条では、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合には、60パーセント以上の休業手当を支払わねばならないと規定されています。この労基法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」は、民法536条2項とは程度が異なり、使用者側の故意や過失にとどまらず、使用者側に起因する経営、管理上の障害によって生じたかどうか、という点も含みます(参考判例:最高裁昭和62年7月17日民集41巻5号1283頁「ノースウエスト航空事件」)。

(労基法26条)

使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当てを支払わなければならない。

 したがって、仮に民法536条2項には該当しないとしても、従業員に出勤させないことについて「不可抗力」であるといえる場合でない限り、60パーセント以上の休業手当の支給が必要です。

 

⑵ 基本的な判断ポイント

基本的な判断のポイントは、ⅰ)新型コロナウィルス感染の可能性が生じたきっかけが業務に関連しているかという点と、ⅱ)「自宅待機」を要請したのが誰かという点です。

ⅰ)について、例えば会社にすでに陽性者が出ていて、業務に関連して当該陽性者と接触し、感染する可能性があったということであれば、会社がきっかけとなって感染可能性が生じていると考えられる場合があります。

感染経路を分析し、会社での業務上感染した可能性があるかどうかを、会社の感染症対策の実施状況なども踏まえて検討することになるでしょう。

ⅱ)について、ご家族に陽性者がいる場合に、保健所から「濃厚接触者」として自宅待機を求められた場合は、基本的には「不可抗力」に該当すると考えていいでしょう。

 

⑶ ①発熱がある場合

特に会社に陽性者などが出ていない時点で、従業員に37.5度以上の発熱があって、新型コロナウィルス感染症に感染している可能性が認められ、業務の遂行自体が難しい健康状態にある場合は、新型コロナウィルス感染症の可能性が強く、民法536条2項の帰責事由はなく、賃金全額の支給までは必要ないと考えられます。ただし、当該従業員の所属する部署に陽性者やPCR検査を受けている従業員が出ているような場合は、業務がきっかけで新型コロナウィルスに感染している可能性があるため、その点をきちんと分析する必要があります。

この場合でも、いまだ新型コロナウィルス感染症に感染していない可能性も十分にあることから、労基法26条には該当し、60パーセント以上の休業手当の支給が必要となるでしょう。

他方で、発熱がある場合であっても、新型コロナウィルス感染症に感染している可能性が低く、業務の遂行が可能な健康状態にあるにもかかわらず自宅待機を命じる場合は、民法536条2項の帰責事由があると判断され、賃金全額の支払義務が認められる可能性はあります。

 

⑷ ②典型症状がある場合

次に、②の場合も基本的には①と同様、感染可能性が生じたのが会社での業務に起因するのでない限り、民法536条2項の帰責事由には該当しないでしょう。

また、典型症状があり、新型コロナウィルス感染症に感染している可能性が極めて高いと認められる場合は、PCR検査の結果が出ていないとはいえ、そのまま出勤されると他の従業員に感染する可能性が高いため、労基法26条の帰責事由にも該当せず、休業手当の支給もしないと思われます。

とはいえ、はっきりと感染が確認されたわけではないため、PCR検査が出るまでの間、休業手当を支給する運用とすることも考えられるでしょう。

 

⑸ ③家族に陽性者がでた場合

先に同居家族の陽性が確認された場合は、直ちに会社での業務に起因して感染可能性が生じたとは考え難いと言えます。

この場合、保健所から「濃厚接触者」と認められ、感染症法44条の3によって、14日間の外出自粛および経過観察が求められたのであれば、会社からではなく保健所からの要請となるので、民法536条2項の帰責事由にも、労基法26条の帰責事由にも該当しないと考えてよいと思います。

他方で、「濃厚接触者」とは認められなかった場合、職場の安全管理のため、このような状況下にある従業員に対して自宅待機を命じることも十分考えられます。この場合は、新型コロナウィルス感染症に感染しているわけではないため、労基法26条の帰責事由には該当し、自宅待機を求める場合に休業手当の支給が必要でしょう。

 

⑹ 法的義務にとらわれない対応も一つの方法

これまで述べてきたように、従業員に自宅待機(欠勤)を要請する場合、その状況に応じて賃金支払義務や休業手当の支給義務が生じますが、直ちに義務の有無を判断することが困難な場合もあります。

また、従業員側からすれば、新型コロナウィルス感染症の感染が疑われる場合に、給与や休業手当の支給を受けることができないとすれば、発熱や症状の報告を秘匿する可能性もあります。

そこで、従業員からの申告を促すためにも、法的な義務にとらわれず、休業手当の支給を導入するという選択肢もあると思います。

また、在宅やテレワークの導入により、自宅待機をしながら業務を継続してもらう余地もあるでしょう。

法的な対応を前提としながらも、会社の状況に応じた運用を選択することをお勧めします。

 

お困りの際は、弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください

https://www.aster-law.net/reservation/

以上

Contact usお問い合わせ・法律相談のご予約

法的な問題でお困りの方は
まずは弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください!

tel.0120-94くよくよ-74なし55GO! GO!

tel.0120-94-7455くよくよなしGO! GO!

受付時間/平日9:00〜17:00

PAGE TOP